四谷三丁目のトラットリア「LA VITA ラ・ヴィータ」にてオリーブオイルセミナーを開催致しました。
今回、初めての試みがあり、開催日を心待ちにしていたセミナーでした。

ラ・ヴィータは、イタリアの路地裏のトラットリアのイメージそのままに、大通りから一本入った場所にあります。須田オーナーシェフが作るイタリアの味を求める常連さんで日々賑わっています。

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照明を落とした店内には、イタリア時代の思い出の写真や趣味の品が飾られています。

今回のセミナーはほとんどがお店の常連のお客様。定員の24席はすぐに満席。
一旦キャンセルが出たものの、須田シェフの人脈で再び満席です。

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ワイン好きなお客様が集まるお店です。
今夜もサービスの中村さんがワインをセレクトし、たっぷりとグラスをスタンバイ。

 

 



アットホームなトラットリアらしく、須田シェフと私がお客様の紹介をした後にセミナーのスタート。
今回は、イタリアに長く住んでいた方、お仕事や旅行で頻繁にイタリアへいらっしゃっている方など、イタリア通の方がとても多くいらっしゃいましたが、実のところ、イタリアでもこうしたオリーブオイルの基礎知識は一般消費者には知られていないのが現状です。
いつもと変わらないお話を、いつものスタイルで皆さんにお伝え致しました。
基礎的なことと、昨年収穫のオイルの傾向など。熱心にお聞き下さりながらも、笑い声が出る楽しい雰囲気でした。

この後はいつものようにテイスティングです。
今回は以下の4種類。3番以外は全て2013年の秋に収穫、搾油されたオイルです。
もうとっくに日本の市場に2013搾油のオイルがありそうですが、実はまだ半分が一昨年のオイル。ノヴェッロと違い、通年商品は出荷や輸送になかなか時間が掛かるのです。

少数のLuceVerdeのお客様以外は、初めてのオイルテイスティングです。皆さん戸惑いながらも真剣に楽しんで下さっていました。
あまりの静けさに心配になったのか、厨房から須田シェフが様子を伺いに出ていらしたほど。

今回使用したオイル
  1. イタリア ロンバルディア州デセンツァノ ガルダ湖周辺の土着品種カザリーヴァを中心としたブレンド。DOPガルダ・ブレシャーノ。今年は特に香りも味わいも非常にマイルド。
  2. イタリア シチリア州キアラモンテグルフィ この土地の土着品種トンダイブレア単一。DOPモンテ・イブレイ。香りが高く、辛みもある。単一とは思えない広がりある香りと味わい。
  3. 残念なオイル
  4. イタリア トスカーナ州ガイオーレ・イン・キャンティ ブレンドですがほぼコレッジョーロ種。DOPキャンティ・クラシコ。辛みと苦味が刺激的なオイル。

初めての方が多かった今回は、分かりやすく北から南まで味も香りも全く違うオイルを揃えました。好みもはっきりと分かれました。
でも大切なことは、3番のオイルがなぜ美味しくないかを知り、香りと味を覚えて頂くことです。

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セミナーが終わり須田シェフがメニューの説明をして下さっています。

 

 

 



これらのオイルを使ったお料理のスタート・・・と、いつもならばこの流れなのですが、今回は違います。ここが新しい試みです。

「全ての料理に、3種類のオイルを各自で掛けて頂き、どのオイルが最も合うのかを検証して頂く」

3つに分けられる食材はそれぞれ3つご用意頂きました。
今まで、したくともできなかったセミナー料理です。パンや簡易食材に数種のオイルを掛けて検証することは、レストラン以外のセミナーではもちろんしていますが、「良質な食材」を「プロが適切に調理」した「料理」に掛けて比較したことはありません。
しかも、オイルをより感じられるよう、素材がダイレクトに味わえる調理法のみです。
生もありました。

前菜:そら豆とペコリーノのトスカーナ風

トスカーナで定番の組み合わせの、生のそら豆とペコリーノ・トスカーノ。
須田シェフのオリジナルアイディアの、豆のさやに刻んで入れたスタイル。以前からしてらっしゃるスタイルですが、こうすることで掛けたオイルも流れ無い為、今回のセミナーにもぴったりの形です。

もちろん3つのオイルを掛けて比べます。
1番を掛けると、塩気の強いトスカーナ料理がマイルドに。
2番は、オイル自身の香りが高いため、他の香りが消されます。
4番を掛けると、そら豆の青臭さが強調されます。
私は1番との組み合わせが好みですが、本場のように食べたい方は4番が良いでしょう。

前菜:ヴェネト産ホワイトアスパラガスの炭火焼き

強火で炭焼きされたアスパラは、水分がしっかりと中に残り、シャキシャキと美味。
黒く掛けられているのは炭塩。

3本それぞれにオイルを掛けて試してみます。
1番はアスパラの香りと甘みを良く引き立てます。塩も優しくなります。アスパラ自体の味を楽しむには1番が最適です。
2番はここでもやはりオイル自身の香りが勝ってしまいました。
4番もとても相性が良く、炭火の強さとハーブの様なオイルの強さが良いバランス。

スープ:イタリア産白インゲン豆のスープ

田舎の家庭料理のような、ほっこりする豆のスープです。
これには文句なく4番のトスカーナのオイルが合います。
豆は優しいイメージがありますが、味を吸収する食材だと思います。1番では味も香りも消えてしまいます。2番は青みだけが残る。
4番のキリリとしたオイルが、豆に吸い込まれることなく良いアクセントになっています。

「今回はパスタが無いのですね。」とおっしゃる常連のお客様がいらっしゃいました。
当初、シェフはパスタもお考えだったのですが、よりオイルをはっきり分かる為には豆のスープがいい。と、このメニューに。
「オイルの違いを実感する」という最初に決めた趣旨からブレることはありませんでした。

 

セコンド(肉料理):牛の炭火焼き2種 フルール・ドーブラックと、山形産短角牛

これまたシンプルに炭火で焼かれた2種の牛肉。香りも味わいも噛みごたえも全く違います。
3種のオイルを掛け比べながら頂きます。

牛肉1種で良いところを贅沢に2種にしたのには理由が。
どちらの肉をお客様が好み、どう感じるのか。それをシェフが知りたいと思ったことが理由です。
難しいですね。いずれも美味しい肉。好みの違い、それに尽きると思います。私はいずれも好きです。

ただし、合うオイルは全く違いました!
これは私にとっても大きな発見です。シェフが調理した2種の美味しい牛肉を同時に、且つ高品質な数種のオイルを掛け比べながら頂く機会など、通常ありません。

短角牛には4番のトスカーナオイルが完璧に合います。オイル無しでも肉の脂が美味しいのですが、ここにピリ辛のオイルを掛けると味が締まり、爽やかな味わいが加わります。

フランスのフルール・ドーブラックは赤身肉。
美味しい赤身肉ですが、これだけで食べるのは脂の乗った牛肉を食べ慣れている日本人には物足りないかもしれません。
でも、そこへ2番のオイルを掛けてみると劇的に変化。
ここまでの料理には、2番の香り高さが邪魔になってしまっていました。ところが、この噛みごたえと品のある赤身肉に、青い野菜の香りがぴったりと寄り添い、噛めば噛むほど味も香りも広がります。
1番と4番ではこの変化は見られませんでした。

ドルチェ:パンナコッタ

衒いの無いシンプルな王道パンナコッタにはキャラメルのソースが掛かっています。
パンナコッタの甘味とキャラメルの苦みに、4番のオイルがベストマッチでした。4番を掛けることで、味わいの余韻が続きます。

ワイン:ワイン

シンプルな料理に合うワイン、6種がセレクトされました。
左側の現在大人気の自然派ワイン。先月この生産者が来日し、須田シェフもお会いしたそう。
右側はこのお店の常連の方が、イタリアに出掛けた際にブドウ収穫をお手伝いしたワインだそうです。
お料理にもワインにもひとつひとつに「人」のエピソードが感じられました。


以上が、「オリーブオイルの違いを感じる」ための今回のセミナー料理です。

何度も言うようですが、こうした経験は稀有です。
今までもこうした料理をいつかどなたかにお願いしたい、そう思っていましたが、今回は須田シェフ自らのご提案で実現致しました。
実は須田シェフは、1月のリストランテ・ホンダでのオリーブオイルセミナーにお客様として参加下さいました。その経験もあり、お客様が望んでいることを理解して下さっていました。ここにプロの調理人として検証してみたい事が加わり、自然にこの形のご提案になったようです。
願ってもない有難い申し出と、このご縁に感謝いたします。
須田シェフ、ありがとうございました。

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こうした貴重な機会を、楽しく気持ちの良い方たちと一緒に過ごせとても嬉しく思っております。とても充実した時間でした。

最後になりましたが、ご参加の方々に心からお礼申し上げます。お忙しい期末に足をお運び頂き、本当にありがとうございました!


ご協力頂いたみなさま