四谷三丁目のトラットリア「LA VITA ラ・ヴィータ」にて、第二回目のオリーブオイルセミナーを開催致しました。
1回目の開催以降、須田
シェフはすっかりオリーブオイルの魅力の虜になってしまったご様子。如何にオリーブオイルが料理にとって大切か再認識して頂けたこと、とても嬉しく思っています。普段の営業でもクオリティ高いオイルを惜しげなく使ってらっしゃいます。

そんな須田シェフとの再びのコラボのテーマは「イタリアの夏の島」
ここ数年、私が毎年のように通っているシチリアのトラーパニという大好きな街にフォーカスしたいと思っていたところ、ちょうどシェフもトラーパニの伝統パスタを最近メニューに載せているとのこと。
すんなりとテーマが決まりました。

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セミナー前のカウンター。
グラスと共に、須田シェフたちが手打ちなさったパスタが並んでいます。

 

 



照度を落としている店内は、まさにイタリアの街角のトラットリアのようです。
気取らない雰囲気が、初めてであっても馴染のお店にいるかのよう。

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テーマはすんなり決まったものの、今回オイル選びは少々難航致しました。
島のオイル、品種は違えど、何となく似た雰囲気になるのです。これでは初めてご参加下さる方に、オイルの違いをはっきりと感じて頂くことが難しいのではないかという懸念。また昨年収穫のシチリアのオイルは、全般的に天候と害虫の影響で例年と味わいが違う事も多く、考えていたオイルの変更を何度も余儀なくされました。

そんな条件の中でセレクトしたオイルがこちら。

今回使用したオイル
  1. シチリア州アグリジェント チェラスオーラ、ビアンコリッラ、ノチェッラーラ・デル・ベリーチェのブレンド。シチリアのオイルを世界に広めた生産者のオイルです。
  2. 残念なオイル。ノンフィルターのサンプルとして昨年冬に購入したもの。賞味期限内ではありますが、ノンフィルターは速やかな消費に向きます。時間が経つと味も質も、その跡形もなく下降してしまいます。
  3. シチリア州トラーパニ ノチェッラーラ・デル・ベリーチェ、ビアンコリッラ、チェラスオーラを中心とした複数種のブレンド。「マエストロ」と呼ばれる生産者の手で、非常に丁寧に有機栽培され、搾油されているオイルです。
  4. サルデーニャ州オリエーナ 土着品種ボザーナ単一。17世紀に植えられたという樹もある農園は自然な姿で管理され、反面オイルは化学的に管理され、質の高さを誇ります。

今回、セミナー初参加の方が半分程いらっしゃいましたが、全員が、2番のオイルが他のオイルと明らかに違うことに気付いてらっしゃいました。
2番を好き、とおっしゃる方は皆無。「良くないオイル、分かり易すぎましたよ」という声まで頂戴したほどです。恐れ入りました。

1番のオイルは例年はもっと香りが強く、辛みもあるのですが、今年はかなり大人しい仕上がりです。

3番のオイルには思い入れがあります。この農園には3年前に続き、昨年もお邪魔し、オリーブの木、実、搾油方法等を見学しました。ニコラ氏は素晴らしいマエストロです。
シチリアで例年に比べて味が違うオイルが多い中、このオイルのクオリティは全く変わりません。収穫が例年より前倒しになった昨年、慌てて稼働する搾油所と違い、マエストロはそれを見越して搾油所の準備も万端にしてらしたのでしょう。

オイルも人が作るものです。最近は食に対する信頼性が取り沙汰されていますが、「正しい人が、正しい物を作る」と私は思っています。
そして、その「正しい物」に私たち消費者は敬意を持って「正しい金額」を払う、「正しい消費者」でありたいと思います。「正の連鎖」が続くこと、心から願っています。

この農園にお邪魔した際に、奥様からは今回のメニューにもあるベッカフィーコを習ったり、他にも料理のアドバイスを頂戴しました。ぶどう棚の下でドンナフガータの白ワインと共に頂いたランチ、忘れられません。
さて、回想はこのくらいにしまして、お待ちかねのお料理です。

もちろんトラーパニを中心とした島のお料理です。

前菜:魚介と野菜やフルーツのインサラータ2種等の盛り合わせ

右から時計回りに
1.マグロとベリーのサラダ(3)
2.セロリとカラスミのサルデーニャ風(4)
3.軽く炙ったイカとオレンジのサラダ(1)

3種とも、厨房でオイルを少量使って合えてあります。手元で更に掛けて召し上がって頂きます。
もちろんそれぞれ合うオイルは違います。
()の番号が相性の良いオイルです。

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この中で最も良くアッビナメントしたのが、3のイカとオレンジのサラダに1番のオイルです。
軽く炙ったイカの香ばしい香りを、今年のマイルドな1番のオイルが引き立て、オレンジの爽やかさを包み込む。玉葱のアクセントで締める。
シンプルですが、その塩梅が良い非常に美味しい一品でした。

前菜:パネッレとパーネ・クンサート

これを両方ともご存知の方は、シチリア、いえ、トラーパニ通ですね。
パネッレはシチリア西部で良く食べられるファストフードのようなもの。ひよこ豆のペーストを成形して揚げたもの。
トラーパニで私は必ずこれを頂きます。オリーブオイルセミナーの料理ではありませんが、是非!とシェフにリクエストしました。
実は、パウダーの入荷が間に合わず、豆をシェフご自身で挽いたそうなのです。
粒がまだ残るパネッレも新鮮でした。

パーネ・クンサートは、トラーパニ風パニーノです。クンサートはこの土地の方言で、「濡らした」というような意味。パンにオリーガノ、トマトをこすり付け、オイルをたっぷりと掛けます。アンチョビやパルミジャーノも掛けます。
今回は、少量のブルスケッタ式で。

こうしてトラーパニの文化を感じる前菜を「おまけ」として付けて下さったシェフに感謝です。

スープ:トウモロコシの冷製スープ

今回の「イタリアの南の島」のテーマからは外れ、「日本の北の島」北海道のトウモロコシです。
LAVITAで長く働いてらした方が、今は北海道にいらっしゃるとのこと。その方から送られてきたトウモロコシ。
こんな人との繋がりを感じられるアットホームな料理、良いですね。

塩とトウモロコシだけの甘味。冷たく、夏にぴったりの美味なスープでした。
各自好みのオイルを掛けて頂きます。

プリモ(パスタ):ブジアーテ~ペスト・トラパネーゼ

パスタではありますが、今回のメイン料理です。
このペストのお味、トラーパニのマンマが作ってくれる家庭料理のようでした。

ブジアーテとはこのパスタの形状のこと。トラーパニの伝統パスタです。
伸ばした麺を竹ひごに巻きつけて作ります。
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トラーパニでも一般家庭ではなかなかこの手打ちをしなくなりましたが、ペスト・トラパネーゼは夏の定番ソースです。
バジル、トマト、そしてシチリアの名産アーモンドが入っています。

掛けるオイルはもちろん、トラーパニ産の3番。オイルの辛みを添えます。
トマトの酸味が少しありますので、1番でも合います。

セコンド(魚料理):イワシのベッカフィーコとカジキマグロのインボルティーニ

ベッカフィーコは通常その名の通り、鳥のような形に丸めて焼きますが、今回は30人近くと人数が多い為、重ね焼きスタイルでの提供でした。
まるで、トラーパニの田舎の家に行き、大勢で食事をしてお皿に取り分けたときの様です。何れもワインが進むお料理です。

カジキマグロにはやはり3番のオイルが良く合いました。
ベッカフィーコには3番もしくは、苦味もある4番が良いアクセントに。

ドルチェ:ビアンコマンジャーレ

ここにもオイルを掛けます。
どのオイルが合うのか、自由に試して頂きました。
もちろんそのままで美味ですが、オイルを掛けると味に変化が生まれます。
甘味に馴染む1番、アーモンドの香りに合わせた4番、それぞれが合いました。


写真をご覧になってお分かりのように、本当に衒いのない、家庭料理そのものです。
今回のお料理コンセプトは「トラーパニの郷土料理」

ブジアーテも、ペストの味も初めての方が多かったのですが、「初めて食べる味だけど、どこか懐かしい」そうおっしゃっていた方が何人もいらっしゃいました。


郷土料理はレストランではなく、やはり一般の家庭で頂くのが一番です。
それを須田シェフは、飾ることなく、そのまま再現してくださいました。

このたっぷりの量も、「マンマの料理」ですね。本当にお腹も、心も満ち足りた、里帰りのような食事時間でした。

セミナーの感想には、「美味しいオイルを作る為には大変な労力が掛かるのですね」と複数の方から頂きました。今回、私が最もお伝えしたかったことです。
その気持ちがこうして伝わった事、とてもとても嬉しく思っています。美味しいオイル、是非楽しんで下さい。

ご参加の皆様、本当にありがとうございました。

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 須田シェフ、今回もありがとうございました。お疲れ様でした!


ご協力頂いたみなさま
  • Trattoria LA VITA ラ・ヴィータ:須田シェフ始め、スタッフの皆様の素晴らしいコンビネーションのお陰で、和やかにセミナーが出来ましたこと、感謝いたします。
  • Titone:3番の尊敬するオイルの生産者です。日本では「アステイオン・トレーディング」さんが取り扱ってらっしゃいます。