10月末のイタリア旅で持ち帰ったオーリオ・ノヴェッロ(新油)を使ったセミナーを、四谷のトラットリア「LA VITA」にて開催致しました。
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須田オーナーシェフが作る料理は、イタリアの伝統的な物。絞り立ての辛味と苦味が強い新油を受け止められる料理です。
そして、このラ ヴィータでは3回目のセミナー。須田シェフとは気心も知れていますし、大のイタリア好きな方。
新油を喜ぶイタリアの雰囲気を伝えるセミナーを目指しました。

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かしこまらない雰囲気のお店です。
集まって下さった楽しい方々のお陰で、とても賑やかで、楽しいセミナーになりました。

lavitaテイスティングはいつものように4種。
流石、香りが強い新油。お店のスタッフがトレイに乗せてテーブルに運こんで下さるのですが、トレイが通るだけで青々しい香りがふわっと漂います。

今回使用したオイル
  1. イタリア ヴェネト州メッツァーネ・ディ・ソット グリニャーノ種単一2015年 この土地の土着品種だが、デリケートゆえ扱いが難しいことから希少なものに。搾油後そのまま濾過装置に通している為、非常にクリアな味わい。新油らしい辛味と苦味を持つ。
  2. イタリア トスカーナ州トレクアンダ オリヴァストラ・セッジャネーゼ種単一2015年 毎年高品質のオイルを生産している生産者から直接頂いた、貴重な原種単一の新油。新油らしい辛味苦味を持ちながらも、まろやかさがある。
  3. 残念なオイル
  4. イタリア ウンブリア州フォリーニョ モライオーロ種単一2015年 商品用の搾油を始める前の、自家用を分けて頂いた物。モライオーロの特徴である強い辛味と苦味が、新油ゆえかなり強く主張する。後味はクリア。

新油のテイスティングは、非常に難しいのです。
絞ったばかりの青々しい香りが強いですし、味わいも強く、うっかりすると喉を痛めてしまいます。そうなると、もう次のオイルの正しい評価がしにくくなります。

初のオリーブオイルテイスティングにノヴエッロ、難しかったかと思います。
それでも、初回にも関わらず、こんなに素晴らしいテイスティングをなさっていた方が。

lavita01香りや味わいの感じ方から評価まで、しっかりとご自身の意見を書いてらっしゃいます。

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毎回お伝えすることですが、お好みは人それぞれです。
セミナーでご紹介するオイルは、正しい知識を持って育てられ、搾油から始まり的確な経緯を経て、ここに届いている良いオイルばかりです。どのオイルを好きでも、どのオイルをどのお料理に使っても、もうそれは正解だと思っています。

さて、今回はこの3つのオイルの生産者を写真と共にご紹介いたしました。
何れもこの秋に訪ねている生産者です。農園、搾油所、人。一緒に過ごした時間を私も思い出しつつ、お話しました。

盛りだくさんだった今回のセミナー、時間をはるかにオーバー。
食事スタートも遅れてしまいました。普段は食事スタート時間を守るのですが、今回は遅くなってしまい、申し訳なかったと思っています。

ようやくお食事のスタートです。
先ずは須田シェフからお料理の説明を。

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先付:スイーノ・ネロ・ディ・ネブロディのサラーメ

希少な黒豚を使ったサラミ。メニュー外でしたが、差し入れを頂きました。
シチリアのエトナ山脈でほんの僅かに飼育されている黒豚です。
初めて食べましたが、脂身がとても上品。スッと溶けてゆきます。
フィノッキオは臭み消しではなく、ほんの少し香りを添える程度に加えられています。

先付:自家製オリーブの新漬け

塩度は非常に低いのですが、アクやえぐみが全くなく、甘味たっぷりで美味!
これはなんと、セミナーご参加者の自家製。全員に行き渡るよう、お持ちくださいました。
ご自宅に大きな鉢植えを幾つも育ててらっしゃって、毎年美味しい塩漬けを作ってらっしゃいます。
貴重な物をありがとうございました。

前菜:鶏レバーペーストのクロスティーニとブランダクイウン

トスカーナ地方の料理鶏レバーペーストを乗せたクロスティーニは、この店でも定番メニューです。
掛けるのはトスカーナの2番のオイル、、、と思いましたが、4番も良く合いました。

ブランダクイウンはリグーリア風のバッカラマンテカート。
須田シェフが先月訪ねた、リグーリアの小さな町のマンマに伝授して頂いたレシピだそう。
塩ダラとじゃがいもの配分と味わいが絶妙!
これには、2番のオイルが好相性。打ち合わせの際には1番と思っていたのですが。

これらが乗っているのは、塩無しのトスカーナパン。
スーシェフの小林さんにお願いし、特別に焼いて頂きました。
もちろんカリッと炭火で焼いて、シンプルにフェットゥンタでも頂きました。
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塩を振り、オイルをたっぷり。今回の旅行で食べた味そのものです。

前菜:パネッレ

サクッと揚がったパネッレは噛みしめるとしっかりと豆の味が。須田シェフが今回特別に作って下さったもの。
これも、とても時間が掛かる料理です。しかも、今回はエクストラバージンで揚げて下さいました。

スープ:白インゲン豆のスープ

少し寒くなってきた季節にピッタリのスープ。ノヴェッロの時期ともちろん重なります。
イタリアでも生産者たちはこうして、スープに翡翠色のオイルを掛けて食べています。
これには2番のオイルを掛けて。

プリモ(パスタ):トロフィエのジェノヴェーゼ

これもリグリーアのマンマから伝授されたレシピとのこと。
ジェノヴェーゼにトマトソースが掛かっているのがポイント。これで飽きずに、味の変化も楽しみつつ頂くことが出来ます。
これには、当初1番と思ったのですが、2番を掛けるとトマトの香りが立ちます。

リグーリアのタッジャスカ種の質の高いオイルの差し入れがありまして、これも、文句なく良い相性。色々な味をまろやかにまとめていました。

セコンド(肉料理):ロバのロースと、短角牛のリブロースの炭火焼き

昨年から都内のイタリアンレストランでロバ肉を出すところが出始めましたが、須田シェフはその先駆け。
私もこの店で初めてロバを食べました。
今回のロースは香りも味わいも野性味が抑えられ、牛の赤身のようでした。
短角牛は外れない美味しさ。
これらには、4番のモライオーロ種をたっぷりと掛けて頂きました。
しっかりした肉を咀嚼するには、このくらい強いオイルが必要です。
焼いた肉に、強いオイル。
王道ですが、やはり素晴らしい相性。絞り立ての強いオイルを楽しむ、今回のセミナーの趣旨からしても、最高の組み合わせでした。

ドルチェ:バニラのジェラート

オイルを掛けて召し上がって頂きましたが、これこそ、お好み次第です。
私は果物の香りがする1番のオイルが好みでした。


衒いの無い王道料理や、イタリアのマンマの味そのままが並んだ今回のお料理。
強いノヴェッロを楽しむには、思った通り、いえ、思った以上に最適でした。

見た目はシンプルな料理ばかりですが、いずれも時間が掛かっています。例えばパネッレはペーストを4時間かき混ぜ続けたそう。
イタリアの伝統料理はもちろん、元々は家庭料理。
家族が集まる日には、マンマたちは早朝から時間を掛けて愛情を込めて、家族の為に料理をします。

須田シェフも、店の常連のお客様の顏、初めて会うお客様の顔を想像しながら、作って下さったことと思います。
シェフばかりでなく、パネッレの為にひよこ豆の粉を手に入れて下さった方、自家製のオリーブ漬けを持参して下さった方。
そんな思いやりが溢れた今回の料理。オリーブオイル生産者の一年の結晶を味わうに、相応しい料理でした。


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賑やかで、楽しい会。
初対面なのに久し振りに会った旧友のように、皆さん楽しくお話なさっていました。
中には、初対面でありながら同席の方々で新年会の約束をしてらした方たちも。

オリーブオイルを囲む会。
今回もご参加の方々のお陰で、素晴らしい会になりましたこと、心からお礼申し上げます。