昨年オープンしたTENOHA DAIKANYAMAのキッチンスタジオをお借りして、オリーブオイルセミナーを開催致しました。

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今回も早いうちから沢山の方にご興味頂き、当初の予定よりお席を増やして多くの方にご参加頂きました。

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レストランの奥に、このような素敵なキッチンスタジオがあります。
大きな窓からパティオを望む空間は、明るく、開放的で、今日のような休日のランチタイムを過ごすにはピッタリの場所です。

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キッチンスタジオとは言え、こうしてセッティング頂き、気分も高揚します。

今回は初のパティシエとのコラボでもありました。
TENOHA内にあるbondolfi Cafe’でお菓子を作っている佐藤パティシエです。
佐藤氏と一緒にご挨拶をしてセミナースタートです。
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今回も初参加の方、既に何度かご参加下さっている方が混在していらっしゃいます。
中には、オリーブオイルソムリエやテイスター仲間も。
彼女たちの存在を力強く感じながら、セミナーは基礎編をテキストに沿って進めました。

集中できる空間だったこともあるのでしょうか。
いつにもまして皆さまがとても熱心に聞いて下さっている事が、アイコンタクトだったり、うなずき等で伝わってきます。
つい、説明にも熱が入ってしまいます。

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座学後はテイスティング4種です。

今回使用したオイル
  1. イタリア シチリア州トラーパニ チェラスオーラ、ノチェッラーラ デル ベリーチェ、ビアンコリッラのブレンド。2015年搾油。有機農法にこだわる生産者が健康に育てている。自社搾油所にて収穫後直ちに搾油。草をちぎった時のような青々しい香りがすぐさま鼻に届く。シャープな辛味が口中を刺激し、苦味も少し感じられる。非常にクオリティが高いオイル。
  2. 残念なオイル
  3. イタリア トスカーナ州トレクアンダ モライオーロ種単一。2015年搾油。毎年高品質のオイルを生産している生産者から直接頂いた、貴重な単一の新油。タイムなどのハーブ香りや、オリーブの実自体の香り。新油らしい辛味と苦味を持ちながらも強すぎず、バランスが取れたまろやかさがある。
  4. イタリア ウンブリア州フォリーニョ モライオーロ、フラントイオ、レッチーノのブレンド。2015年搾油。常にクオリティの向上を目指している生産者。青い胡椒を潰した時のような香り。新油らしいキリッとした強い辛味と苦味が口に含んだ瞬間から主張し、しばらく続くが後味はとてもクリア。

それぞれのオイルの説明は、スライドをご覧頂きながら致しました。
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足繁く、生産者を訪問していますので、撮りためた写真は数多くあります。やはり、その場の雰囲気や様子をお伝えするのにはこうして写真を見て頂くのが一番です。

とは言え、レストラン等の会場は皆さんが一様にご覧頂ける壁面が無い事が多く、なかなか実現しません。
この会場ならではです。

これは1番の生産者Titoneを3年前に訪ねた時の写真です。

teno17ここには、ほぼ毎年のように訪ねています。ご家族とも繋がりが出来ますので、オリーブオイル以外のエピソードなどもお話します。

こうした事も、時間が許す限りセミナーでお話したいと思っています。
どんな人たちがこのオイルを作っているのか。
消費者として、とても知りたい事だと思うからです。

 

この後はお料理です。
先ずは&STYLE RESTURANTの遠藤シェフからメニューのご説明を頂きます。
tenoha「本当に悩みました。メニューが出来たのは昨夜遅くです」と、遠藤シェフ。

私も当日の朝、手書きのメニューを手渡されました。
それが、以下のお料理です。

スープ:ビーツのスープ

色鮮やかなビーツのスープには、3番のオイルを合わせます。

香り高い1番や、辛味の強い4番のオイルを垂らしたいところですが、温かいスープに掛けると、香りはより強く、辛味は更に際立ってしまいます。
3番のオイルを垂らすと、ビーツの自然な甘みを楽しむことが出来る無理の無いアクセントに。

:ロールパンとイカ墨のグリッシーニ
:3種のオイルに合わせた5種のお料理_その1

【写真左】フォアグラとピスタチオを詰めたインヴォルティーニ ひよこ豆を添えて
これには3番のオイルを。
単一品種にも関わらず、繊細で複雑な香りと味わいを持つこのオイルは、淡白な鶏、濃厚なフォアグラ、アクセントのピスタチオ、これらにとても自然に馴染みます。

 

【写真上】白インゲン豆とレフォールサラダ
合わせるのは4番のオイル。
甘味のあるインゲン豆に、ピリピリと辛いレフォール(西洋ワサビ)。ここに、辛味が強い4番のオイルを掛け、更に辛味を足します。
このように、辛い料理に更にオリーブオイルの辛さを足すことは、あまり取らない手法です。どちらかと言うと、辛味を和らげるためにマイルドなオイルを使う事が多いのです。
今回のこれは、成功。西洋ワサビの良い香りと辛味がより立ち、オリーブオイルの辛味も美味しく感じます。
白インゲン豆であることがポイントのようです。

 

【写真右】カリフラワームース プンタレッラとボッタルガのサラダ
プンタレッラにからすみが掛かっているだけのように見えますが、下には、味とオイルの受け皿でもあるカリフラワーのムースが隠れています。
苦味のあるプンタレッラ、甘味のカリフラワームース、塩気のボッタルガ。
ここには1番のオイルを。

白のイメージの爽やかな山の物と、塩気と潮の香りが非常に強い海の物を、1番のオイルの清々しい香りと心地よい辛味と苦味がかき混ぜバランスを取ります。
文句無く、今回のアッビナメント大賞です。

 

:3種のオイルに合わせた5種のお料理_その2

【写真右下】レンズ豆の煮込みと鴨の生ハムと砂肝のコンフィ
これには4番のオイルを。
柔らかく煮こまれたレンズ豆、塩気のある鴨の生ハム、そして砂肝。いずれも強い食材です。辛みと苦みが持続する4番のオイルは、これらを咀嚼する間もしっかりと口中で主張します。

【写真中央】ゴルゴンゾーラと洋梨 胡桃掛け ピンクペッパーのアクセントで
皆さまそれぞれお好きなオイルを掛けて頂くことに致しました。
1番でも3番でも良いと思います。4番でも間違いではありません。
私が好みと思ったのは、1番です。洋梨の甘味と香りが引き立ちました。

ドルチェ:パンドーロ さつまいものソース添えと、パニラのジェラート

今回のメインは、ドルチェです。
パンドーロはイタリアのクリスマスシーズンの伝統菓子。
パネットーネのようにドライフルーツ等は入っていません。本当にシンプルに生地のみ。
佐藤パティシエが作るパンドーロは、格別な美味しさ。生地が密で、酵母の香りも柑橘系を思わせる程に馨しく。

ここに、添えられたさつまいものソースや、お好みのオリーブオイルを掛けて頂きます。
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ジェラートにもお好きなオイルを掛けて召し上がって頂きました。
これは完全にお好み次第です。私は3番が好みでした。


佐藤パティシエからお声を掛けて頂き、今回のセミナー共催となった訳ですが、折しも12月。
佐藤氏が作る、格別に美味しいパンドーロに、オリーブオイルを合わせてみたらどうだろう。という流れにもなり、今回のセミナーのメイン料理をパンドーロに据えました。

そんな理由からも、佐藤パティシエとセミナー詳細を決めた当初、お料理はカフェで出てくるようなワンプレートランチ、というイメージでいました。
ところがその後、オイルと料理の打ち合わせの際に遠藤シェフと初めてお会いし、オイルや料理についてお話したところ、単なるカフェランチではなくなる予感はしておりましたが、これだけ素晴らしいセミナー料理をご提供頂いたことは、本当に嬉しい驚きでした。

ワンプレートにまとめるのではなく、一皿づつにして大切に頂きたい料理でした。


TENOHA DAIKANYAMAの前身は、イタリアのフードマーケットEATALYを中心とした「代官山ラヴェリア」です。そのまた以前は「代官山プラース」。
15年になるでしょうか。当時、代官山という地への憧れから始まり、ずっとこの場所に馴染みがありました。

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開業当初から中庭に植えられたオリーブの樹にも、ここで過ごした時間と共に思い入れがあります。
ここでのセミナー開催は特別なものでした。

今回は、かしこまったレストランではありませんでしたし、貸しスペースでの軽やかな会と思っておりましたが、佐藤パティシエのひたむきさ、遠藤シェフの素晴らしい料理、特別にお手伝い下さったスタッフの方々。
そして、何より、熱心に聞いて下さったご参加の皆さま。
関わって下さっている皆さまのパワーを頂き、私も熱が入りました。とても。

 

このような会だった今回のセミナー。
生産者から消費者まで、オリーブオイルに携わる方たちを「つなぐ人」でありたい。
改めてそう感じます。

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ご参加下さった皆さま、ありがとうございました!

Francoはこの写真を非常に喜んでいます。
皆さまのような理解ある消費者がいらっしゃること、生産者たちはとても幸せだと思います。