西麻布の「クチーナ トレディチ アプリーレ」で、今回で3回目のセミナーを開催致しました。

今回もランチとディナーの開催。こだわり素材を丁寧に調理するこの店でのセミナーはいつも人気です。
お店も、都会の真ん中とは思えない緑と光に溢れる素敵な雰囲気です。
初めて訪れた方々も、フランスの郊外の一軒家のような雰囲気に感嘆。カメラを構える方も。
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白を基調とした室内に、丁寧にお迎えのお支度を、サービスを担うマダムがして下さいます。
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天候にも恵まれ、真夏のような日差しの中、先ずはランチセミナーがスタートです。

今回のセミナーのテーマは各国のオイル。
イタリア以外のオイルもご紹介したいと、シェフにご相談したところ、「面白そうですね。是非やってみましょう!」と快諾。
ここ数年、ずっとセミナーでご紹介したいと思っていたスペインのオイルや、最近出会ったオーストラリアのオイルなどをラインナップに致しました。

座学は初めての方が大半でしたので、基礎編を。今の市場、製造の工程、油脂としての特徴、購入や使用のヒントなど、オリーブオイルについて、知っておきたいことばかりです。
生産者を訪問した際のお話は、座学中でなく、お料理の合間に写真をお見せしながらお話しました。
これも皆さま熱心にお聞き下さっていました。

今回使用したオイル
  1. イタリア カンパーニア州ベネベント。ラチョッペッラ、オルトラーナ、オルティーチェ。2014年収穫。いずれもこの地の品種のブレンド。例年はリンゴの香りがし、辛味もきっちりありますが、2014年収穫分は香りは穏やかで味わいもマイルド。
  2. スペイン アンダルシア州マラガ。オヒブランカ種単一。2014年収穫。食べ頃にははるか早い青いリンゴをかじった時のような香りと苦味、辛味、そしてえぐみも感じられる。
  3. オーストラリア ビクトリア州ティースディール。コロネイキ、フラントイオのブレンド。2014年収穫。緑茶の香りが漂い、味わいも緑茶を思わせる。シャープな香りと味わい。
  4. ギリシャ カラマタ種単一。残念なオイル。発酵臭が漂う。

今回、その特徴が突出したのは3番のオーストラリアのオイルでした。
品種はギリシャやイタリアでも主要な品種ではあるのですが、やはり土地が変わるとこんなにも変化するのかと、改めて思わせる香りと味わいでした。

2番のスペインのオイルも舌に乗せた瞬間から、苦味と辛味をダイレクトに感じます。
オリーブオイルテイスティングが初めての方は、その強い苦味と辛味に驚いていらっしゃいました。この辛味と苦味が、ボジティヴな物なのか、それともネガティヴな物なのか。
これは、やはりきちんとご説明します。そうでないと、苦い物は良くない物、として分類されがちだからです。最後まで味わうことで、その変化を感じて頂きました。

1番のオイルは今年度のオイルはとてもマイルド。オリーブオイル、として馴染みのある香りとまろやかさでした。

そして皆様にお願いしたのは、4番のオイルの香りと味わいを確かめて頂くこと。今回は、特にディナーの部はテイスティングが初めての方がほとんど。
どのオイルが良い物で、そうで無いのか。1回だけでは覚えられないと思いますが、考えるきっかけにして頂ければ、とても嬉しい事です。

さて、1~3番のオイルに合わせて考えて頂いたお料理が以下です。

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打ち合わせの際、「このオイルはこんな食材や調理法と。こっちのオイルはこう、、、、」といった事を相談するのですが、日高シェフ曰く、実際に合わせてみると、思ったようにならなかったり、オイルのえぐみが表れてしまったりと、打ち合わせ通りにはいかなかったとの事でした。それが2番と3番のオイル。

今までこうしてオイルと料理の相性について打ち合わせをし、これだけ合わないとなってしまった事は初めてです。
慣れているイタリアのオイルでは無かったからなのか、オイルのポテンシャルを私が読み違えていたのか、その理由は分かりませんが、料理を味わってみて、シェフが合わなかったとおっしゃっていた事がとても良く分かりました。

シェフがそんなお話を交えながら、食材とメニューの説明です。
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皆さまがあまり馴染みが無い食材などは、マダムがこうしてサンプルを回して下さいます。
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お料理の説明の後は、ワインです。
ソムリエでもあるマダムが、今回のお料理に合わせたワインの説明を。

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tredic興味をひかれたのは、フリウリのソーヴィニヨンブラン。
ピークを降りてきたヴィンテージは、色合い、香りが、スペインのシェリーを思わせると。
という事で、スペインをイメージしたリゾットに合わせて下さいました。

前菜:琵琶湖の天然稚鮎のコンフィ 胡瓜のソース

2年前に頂いた鮎が忘れられず、メニューに鮎を入れて下さい。と唯一お願いした食材です。
幼い鮎の身は曇りなく甘く、ワタは幼くとも苦味を主張します。
これにフィノッキオの香りが添えられた胡瓜のソースと、加賀胡瓜の輪切りが。
美味です。

そして、これに合わせるオイル。
2番、または3番です。これは選べません。どう食べたいか、、、によります。
2番を合わせると、苦味が倍増。3番を合わせると、苦味が消えてまろやかに。
同じ「オリーブオイル」なのに、どうしてこうも違うのでしょう。
この違いが顕著で、皆さまからも驚きの声が上がっていました。

プリモ(リゾット):トマトの焼きリゾット 熟成豚バラ肉 スペイン産パプリカ

香ばしく焼き付けられたトマトのリゾットに、熟成豚と、パプリカが良い調和です。スペイン産のパプリカパウダーには、辛味と、鰹節の燻香のような香りが少し。

スペインのオイルですからパエリアをイメージしましょうか。
と、打ち合わせの時に。
ところが、焼きリゾットに2番のオイルを掛けると、辛味と苦味が立ちすぎてしまいます。そこで、シェフは豚肉を合わせることにしたとのこと。
確かに、豚肉や上の生のトマトに2番のオイルを合わせると、ちょうど良く。

3番のオイルを掛けてみます。
緑茶の香りが更なるアクセントに。
最もバランスが良かったのは1番でした。トマトの酸味、焦げ、豚の香ばしさ、それら全てをうまくまとめて、美味しさを引き立てながらもマイルドな味わいに。

フリウリの「熟成」ソーヴィニヨンブランとも流石、良い相性でした。

 

セコンド(肉料理):ブルターニュ産ひな鳥 コレクジョンヌのロースト ハーブの香り アスパラソヴァージュと3種の初夏の茸

半身のひな鳥、インパクトありますね。
ハーブとブラッドオレンジでマリネされています。
これに最も合ったオイルは、3番。緑茶の香りはそのままハーブの香りでありますし、ローズマリーやタイムの香りを増幅します。
最後は手づかみで、骨のまわりの肉を堪能。

普段のこの店の上品な設えのお料理とは全く違ったこの皿。
セミナーならではの、日高シェフの大人の遊びです。

ドルチェ:マンゴーのセミフレッド バジルの香り

セミフレッドには3番のオーストラリアのオイルを。マンゴーの香りが引き立ち、よりすっきりとした甘味になります。
生のマンゴーにはレモンやライムを絞る代わりに2番のスペインオイルを。とろりとしたマンゴーがシャキッとし、甘味も引き立ちます。