7月に第1回目のセミナーを開催したばかりの「ダ オルモ」にて、今回はスペシャルセミナーを開催致しました。
昨年秋に訪問した、イタリアのヴェネト州の生産者Verzen(ヴェルゼン)社。ここの若き当主Sig.Davide(ダヴィデ氏)を迎えてのセミナーです。

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ワインと違い、オリーブオイル生産者が来日し、こうしたイベントに参加するのは非常に稀なことです。理由があるのですが、長くなりますので、それはまた違う機会に。

彼の来日が決まった時から、是非このお店でセミナーをしたいと思っておりました。
7月のセミナーで、北村シェフがVerzen社のオイルをとても気に入ってらしたからです。

人気のイベントになることは予想しておりましたが、それをはるかに上回る反響。ダ オルモの原品マネージャーが簡易椅子を買って下さり、増席して頂きました。ありがとうございます!

今回のセミナーは、普段のようにテキストに沿って私が一方的にお話するスタイルではなく、Davideと対話形式を中心に進めました。

ここで問題となるのが、イタリア語訳です。
私のイタリア語は、こういう場できちんと通訳するレベルではありません。
プロの通訳さんをお願いしようかとも思いましたが、稚拙なイタリア語であっても私自身でDavideの言葉を皆さんに伝えようと考えました。
しかし、一人では到底無理です。お客様の中に、イタリア語が堪能な方がいらっしゃることが事前に分かり、その方のお力を借りることに致しました。
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オリーブオイルセミナーは初めて、という方もいらっしゃいますので少しだけオイル全般について話し、残りの時間は昨年秋に彼らの農園にお邪魔した際に私が撮ってきた写真の数々をDavideの解説付きで、見て頂きました。

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彼は子供の頃から家業を手伝い、農業も専攻していますので、オリーブオイル生産についての技術、知識共に豊富です。
それでも、彼にとってはこうした消費者へ向けての説明は初めてのこと。何をどの程度話したらいいのか、という彼と事前に十分打ち合わせ致しました。

先ずは、Verzenのオイルを作っている、彼とその家族の紹介からです。オイルに限らず、何事も背景を知ることは大切なことですし、ご参加の方々もとても興味をお持ちです。

ご両親。ご自宅や農園の様子。普段の食事風景。そして、Zerven社が持つ農園と搾油所の紹介。
150年以上続く彼らの家業は、Davideで4代目ですが、あくまでもそれは記録上あって、実はそれ以前からその地でオリーブオイルの生産を、他の農業と共に続けています。

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長く続けてきた伝統的な手法を、新しい知識と実行力でDavideが変革を始めたのが5年前。父親が引退を決め、当主をDavideに譲った時です。今では息子Davideが主導し、父であるRenzoがアシストをしています。
新しい知識と、古来からの知恵。
これらがうまく融合しているのが、Verzen社なのです。

写真を見ながらのお話の後はテイスティングです。

今回使用したオイル
  1. イタリア ベネト州ヴェローナ メッツァーナ・ディ・ソット。この土地の土着品種、3種をメインにしたブレンド。香り、味わい共に穏やかで、食材の味わいを邪魔することなくうまく引き立てる存在のオイル。Nostran 2014年収穫
  2. イタリア ベネト州ヴェローナ メッツァーナ・ディ・ソット。古来からこの地に育つ品種だが、デリケート且つ、油量が少ない為、生産が減り、現在はこのエリア全体でも数千本に満たない。香りは爽やか。味わいはデリケートだが、心地良い辛味も持つ。Grignano 2013年収穫。
  3. 残念なオイル 
  4. スペイン アンダルシア州 マラガ。紀元前からオリーブオイルが生産された土地であり、この生産者も1000年以上の歴史を持つ。現在はもちろん近代的な設備で搾油され、非常に高いクオリティのオイルを生産している。夏草のようなしっかりした緑の香り。辛味、苦味共にあり、それぞれのバランスが取れている。Finca La Torre 2014収穫

Davideを迎えてのセミナーではありますが、上記のように他社のオイルもご紹介しました。
この点についても、Davideは快く了承。
私が普段からするようにテイスティングを皆さまとし、オイルの解説をいたしました。Verzenのオイルはもちろん彼自身から。

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2014年のヨーロッパでのオリーブオイルの不作については、ご承知の方も多い事と思います。この2番のグリニャーノも、2014年は搾油量が激減したため、今年の初めにはすでに完売。今回のセミナーでは、インポーターの方が定温できっちりと管理していた2013年を使用しました。
後に搾油年を知り、そのクオリティの高さに驚いていた方も多数。鮮度が大切なオリーブオイルは、保管の方法によって、全く質が変わってしまいますから。

ディナータイムスタートです。
先ずは北村シェフから料理の説明を頂きます。
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Davideとこのオイルの出身地であるベネト地方の料理や、彼が普段から家で食べているような料理がコンセプトでした。無理の無い、シンプルな料理。

昨年秋に私が彼らと食べた料理を、写真と口頭で北村シェフに伝えました。特に、リゾットに関して。自家製のヴァルポリチェッラを使ったリゾット、私にとって忘れられない味です。

これがメニュー。

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イタリア語部分をDavideが、日本語部分を北村シェフが、それぞれ書きました。今じっくり見ると、なんだか同じ人が書いたかのように字の雰囲気が似ています。面白いですね。

そして、乾杯。
2olmo34Davideの乾杯で、お食事のスタートです。

先付:バッカラ マンテカート

香ばしい焼きポレンタに、ちょうど良い塩加減のバッカラ マンテカートが。
そして穏やかな1番のオイルを掛けると、より香りと味わいが広がります。

実はこれは、7月のセミナーでもVerzenのオイルに合わせたメニュー。
シェフは同じ料理だから、、、とためらってらっしゃいましたが、何と言っても素晴らしいアッビナメントですから、是非にとお願い致しました。

前菜:山女魚のコンフィ コリンキーのサラダ添え

オイルで柔らかく煮こまれた山女魚。しっとりとした身からふわりと川魚の香りが。
これには、1番よりも辛味のある2番を。山女魚にほんの少し残る苦味と、オイルの軽い辛み。とても良いバランスです。

プリモ(リゾット):ラディッキオ ロッソとヴァルポリチェッラのリゾット

ヴェローナと言えばアマローネのリゾットが有名ですが、これは別物。軽やかで優しいお味です。
ラディッキオの歯ごたえと、お米の食感。甘味と苦味、少し酸味も。
これに、1番のオイルをたっぷりと掛けて頂きます。それぞれの味がより引き立ち、融和してゆきます。
例えば、チーズを掛けることなど考えられません。オイルの為にあるような一品です。文句なく今回のアッビナメント大賞。

そして、Davideのマンマのお味。「本当に味わいが似ている」と彼も驚いていました。

セコンド(肉料理):豚料理3種盛り合わせ 腕のソーセージ、肩ロースのロースト、頭のカツレツ

楽しい一皿です!
コトレッタをサクッと食べると、中はゼラチン質がぶるっと。みっしりと詰まったソーセージを噛めば、香り高い肉汁がじわりと。油が軽やかでしっかりしているのに柔らかいロースト。
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これらには、4番のオイルを掛けて頂きました。ローズマリーの香りもする4番のオイルは、こうした肉料理にはピッタリ。
せっかくの3種のお肉ですから、それぞれに違ったオイルを掛けて楽しんでいる方も。合わせるオイルに絶対の法則はありません。
ご自身で考え、楽しんで頂くことが一番です。

ドルチェ:バナナのババロア、チョコレートのタルト

今回はドルチェにもオイルを掛けて頂きます。
2番のオイルはバナナのような香りが特徴です。このババロアに、2番のオイル。ダブルバナナです。シンプルなチョコレートのタルト、これにも香りが加わり、味わいが広がります。