西麻布の「クチーナ トレディチ アプリーレ」で、オリーブオイルセミナーを開催致しました。
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4回目の今回はディナータイムでの開催。
マダムが「テラスが欲しくて」とこだわって選んだこの店は、都会の真ん中とは思えない緑と光に溢れる素敵な雰囲気です。テラスには、オリーブやレモン、ハーブの鉢が並びます。
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シェフが厳選した食材を丁寧に調理し、サービスとワイン担当のマダムが丁寧にお迎えくださいます。
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今回のセミナーのテーマは「夏」

とは言え、夏のオイルがあるわけではありません。
熱心なオリーブオイル生産者たちの熱い思いを、熱く伝え、涼やかに食べて飲んで頂く会を目指しました。

シェフと打ち合わせをし、各地のオリーブオイル生産者が、普段から食べている物をヒントに、そこに夏のアレンジを加えて頂きました。

お料理の前にまずセミナーです。

座学から。
シェフとマダムが工夫して下さった手作りスクリーンに、テキストや私が各地で撮ってきた写真を映しながらご説明いたしました。

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今回、少し時間が長くなってしまったのですが、写真があると皆さまも興味をお持ち下さいます。

特に、質の高いオリーブオイルを作るために、生産者や搾油所がどのような努力をしているのかを伝えるには写真が分かりやすいと思います。

テキストこそ「基礎編」としていますが、オリーブオイルについて知って頂きたいことは網羅できるよう心掛けています。
そして、何度も足を運んでくださる方へはもちろんですが、オリーブオイルの「セミナー」へ来て下さるのですから、私の知る限りの最新情報をお伝えしたいと常に思っています。

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今回はイタリアの北から南までの3種類と、産地不明の1種類をテイスティング頂きました。

今回使用したオイル
  1. イタリア シチリア州キアラモンテ・グルフィ  トンダイブレア種単一。DOPモンテ・イブレイ。手摘み後3時間以内に搾油。デカンタ方式で澱を沈めている。トマトや、トマトの葉などの香り。サラダから軽めの肉料理まで色々な皿に合わせやすい。 例年に比べ、今年は辛味が控え目。
  2. イタリア イタリア ベネト州 メッツァーネ・ディ・ソット グリニャーノ種単一 。希少な土着品種。果実がデリケートであり、且つ含油率が 少ないことから生産量が少ない希少な品種。フルーツや花の 香りが豊かであるが、料理の香りを邪魔すること無く、素材の味わいを引き立たせるオイル。適度な辛みもある。野菜、白身魚に合う。
  3. イタリア モリーゼ州テルモリ オリーバ・ネーラ・ディ・コッレトルト種単一 。海に近いが標高は高く約500m。小さな農園で、土着の品種にこだわって生産している。グリーンアーモンドやアーティチョークなどの緑の香り。シャープな辛みと味わいが特徴。味の強めの料理に合わせたり、まったりした料理のアクセントにも。
  4. イタリア 産地不明 日本のスーパーマーケットのプライベートブランド。

オリーブオイルのテイスティングは初めての方が半分以上だった今回、オリーブオイルに辛みや苦みがあることに驚いていらっしゃいました。
それが、オリーブオイルのポリフェノールに由来するものとご説明すると、皆さま納得のご様子でした。
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お好みを伺うと、かなり分かれました。
日ごろ、どのようなオリーブオイルを使っているかも、この「好み」につながります。要は、知らない味や慣れない味は「良くない物」と判別してしまいがちなのです。

仮に慣れていらっしゃらなくとも、このオイルたちこそ、真のオリーブオイルですとお伝え出来るのが、こうしたセミナーです。

どんな人たちが作っているのか。
写真を見て頂きながら、オリーブオイルの特徴をご説明いたしました。

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どの方が、何番のオイルの生産者でしょう?
などと、質問も交えながら、彼らのこだわりをお伝えしました。

その後は、2番目のオイルの生産者ヴェネト州のVerzen社にフォーカスしました。
どんな人たちがどう作っているのか。訪問した際の写真やエピソードをお伝えしながらご説明しました。

「オリーブオイルには価格差がずいぶんあるけれど、あんなに大変な思いをして作ってるのならば、300円で買えるわけないですね!」
と、言って下さった方がいらっしゃいました。
その通りなのです。

さて、長くなってしまったセミナーを終わり、食事時間です。

内気でいらっしゃるシェフに代わり、マダムがメニュー説明を下さいました。

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この時間が一番ワクワクします。

この後、各自飲み物をオーダーし、乾杯。
お食事スタートです。

先付:トマトの冷たいスープ ブッラータチーズ

これにはお好きなオイルを自由に掛けて頂くことにしました。

私は1番を。トマトにとても相性の良いオイルです。
3番も合います。

トマトの甘みとブッラータの塩気。1番のトンダイブレア種の香り。
夏です!

前菜:無花果 ボタン海老 赤海老 花ズッキーニ ストラッキーノチーズ グアンチャーレ

美しくて歓声が。澄んだ水に海老が泳いでいるかのようです。

これは、2番のオイルありきの料理です。
打ち合わせの時に、2番のオイルには無花果が合うのではないかと、シェフが。それに何の食材を合わせるかと話していた際に、ヴェネトで海老が美味しかったことを思い出しました。
それで、この皿に。
とは言え、こんな素晴らしい皿は私はイメージ出来ていませんでした。

赤海老はグリルしてありまた違う味と食感が。
甘くなりがちな海老たちを、ズッキーニの食感と、チーズ、グアンチャーレの塩気が引き締めています。

もちろん2番のオイルがボタン海老にぴったりです。
グリルした赤海老には3番のオイルを。

ワクワクするような前菜でした。

プリモ(パスタ):マッケローニ アル ペッティネ 魚介のラグー

魚介のラグーには、ムール貝、タコ、アオリイオカ、マコガレイが。サフランも香りを添えています。
もちっとしたマッケローニが魚介の出汁を吸って、美味!

これには3番のオイルを。
モリーゼ州は海に近く、魚介もとても良く食べられる地域です。ここにトマトを入れてしまうと、ありがちなのですが、サフランを。
シェフ曰く、サフランも良く使う土地なのだそう。

これは本当に3番のオイルがピッタリでした。
辛みのあるスパイスが皿にはありません。魚介と小麦の甘み。もちろん塩気。
ここに、3番のスパイシーな香りと、実際の辛みを効かせます。
温かい料理ですから、その香りも倍増。
とても美味。

セコンド(肉料理):ヴェネト産ウサギ 夏の軽い煮込み

これは1番オイルの産地の郷土料理のアレンジです。
ラグーザで食べた「Coniglo all Portoghese ウサギのポルトガル風」
をシェフにお伝えしたところ、このような夏のアレンジに。

焼いたパキーノトマトを崩しながらウサギ肉と頂きます。添えられたグリーンオリーブのペーストも付けて。
別々に食べると何ということもないのですが、不思議です。こうして同時に口に入れると、ラグーザで食べたあの味に。

これにはもちろん1番のオイルを。
肉にだけフォーカスするのであれば、3番でも良いかと思います。
しかし、全てを一緒に咀嚼して味わうには、断然1番なのです。

ドルチェ:レモンのグラニータ

レモンの澄んだジュレ、グラニータ、クリーミーなチーズ、スポンジ。
そのままで美味ですが、これらに2番のオイルを掛けると、更に、断然美味しくなるのです!
レモンの香りが生き生きと上がってきます。
文句なく今回のアッビナメント大賞。

2番のオイルはフルーツの香りがとても高いので、これをフルーツを使ったメニューをシェフにお願いしました。
打ち合わせの時に、次第にドルチェになり、このオイルには生産者も言うように、レモンの香りが。それを感じ取ったシェフが、レモンのジェラートを。
オイルとジェラートを繋ぐ物を考えて頂き、このドルチェの完成です。


この後はお食事の〆として、食後の飲み物を。

イタリアの伝統的な家庭料理は、ともすれば重くなりがちです。時間を掛けて煮込んだり、しっかりと焼き付けたり。

ただ、夏場はどの地域も豊かに育った野菜をたっぷり使ったサラダ、地元で作られたフレッシュなチーズ。
そんなシンプルな料理を家庭では食べています。

今回のセミナー料理は、生産者たちが夏に食べている家庭料理を。

私の思い付きのようなアイディアでしたが、そんな理由からそれは難しい事が分かり、完全に方向転換しようかと思いました。

が、日高シェフがそのエッセンスを取り入れながら、夏に日本のレストランで頂けるメニューに仕立てて下さったのです。

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特にメインのウサギの煮込みの仕立て方。素晴らしい。
「煮込み」と思っていましたので、こんな風に焼きトマトを、ソースの様にして食べるとは思ってもいませんでした。
ご参加の方々に、この点をきっちりお伝え出来ていたか、不安です。
もし別々に召し上がっていたら、きっとシェフの意図するところは伝わらなかったでしょうから。

素晴らしいアッビナメントのドルチェも。
これを作り出して下さったことに感謝致します。

 


マダムの裕江さんと。
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こちらのお店でセミナーを始めて4年目。
セミナーのずっと前からのやり取りから当日の準備まで。そして、終了後のお疲れさまのひと時。彼女とは、いつも同志のように感じます。
これからもずっと良いお付き合いをさせて頂きたいと思っています。

最後になりましたが、ご参加下さった皆様。
本当ありがとうございました!
長時間のセミナーを熱心に聞いて下さり、オリーブオイルとは何かを真剣に考えて下さったこと、心から感謝しています。

皆様から頂いた一言一言が、励みであり、また次の目標になっています。
また皆様にお伝えすることを更に勉強し、再びお目に掛かりたいと思っています。


ご協力頂いたみなさま