秋田県のブランド、あきたシャポンと比内地鶏を首都圏に広める活動の一環として、LuceVerdeのオリーブオイルセミナーとコラボしたイベント、第2回目を開催致しました。
場所は、下目黒の「アンティーカ ブラチェリア ベッリターリア」にて。

1回目の「ダ オルモ」に続き、今回も食のプロの方々を対象としたセミナーでした。
イタリアン料理店の方や有名ブロガーさんもいらっしゃいましたが、今回は食材を輸入したり販売したりしている方々が中心でした。

オリーブオイル、あきたシャポン&比内地鶏、ランチ。
という3部構成の今回、先ずはオリーブオイルからスタートしました。

オリーブオイルの基礎知識に、新しい情報や最新のデータ、イタリアの現状などをお話しました。
国産のオリーブオイルはまだまだ量が少なく価格も高いことから、輸入物に頼る現在。今、目の前にいるインポーターの方々に是非、エクストラバージンオリーブオイルが生鮮食料品であると認識して頂きたく、いつも以上に熱が入りました。途中、鋭い質問もいくつか。

テイスティングは以下の4種。

今回使用したオイル
  1. イタリア アブルッツォ州カゾーリ 2016年に収穫・搾油された、ジェンティーレ・ディ・キエーティ、イントッソ、レッチーノのブレンド。毎年バランス良いオイルを生産している。トマト、バナナ、青りんごや草等がエレガントに香る。アーモンドのような甘みの中に辛みも持つ。(l'olio 2016)
  2. イタリア サルデーニャ州オリエーナ 2015年に収穫・搾油された単一品種のオイル(ボザーナ種)。乾燥した大地で有機栽培された実を、清潔且つ効率良く搾油。香りが高く、ポリフェノールが多いボザーナ種の特徴が良く出ている。葉の香り、苦みと辛みのバランスがとても良い。搾油後もう1年経っているが、それを感じさせないクオリティ。(Luna Vera 2015)
  3. イタリア ウンブリア州ペルージャ 2015年収穫・搾油された、モライオーロ、サンフェリーチェ、フラントイオ、レッチーノのブレンド。手摘みした実を、最新の概念に基づいた搾油方法。オリーブの実やハーブの香り。シャープな辛みと苦みがあり、非常にクリアな味わい。これも搾油後もう1年経っているが、それを感じさせない。(Emozione 2015)
  4. エクストラバージンオリーブオイルとの表記があるものの、あるべきグリーン(植物由来)の香りは感じられず、酸のある発酵臭が感じ取れる。

お好みのオイルに挙手頂いたところ、今回もまた1~3まで満遍なく手が挙がりました。いずれも非常にクオリティが高いので、好みの違いだけかと思います。

1~3のオイルの詳細を、生産者のプロフィールやを交えながらご説明し、オリーブオイルセミナーは終了です。

 

この後は、あきたシャポンの説明です。
あきたシャポンの生産者であり「あきたシャポン研究会」の佐藤氏と、今回のコーディネーターである料理研究家 野口氏から、あきたシャポンの概要と取り組みについてお話頂きました。

 

シャポンとは、鶏の雄を去勢し、長期間(8ヶ月程度)飼育した鶏のこと。本場はフランスです。
あきたシャポンは、有名な比内地鶏の雄をやはり7~8ヶ月と、日本では類を見ないほど長期間、手間を掛けて育てています。
肉質がしっとりと柔らかく、バターのような香りと濃厚な旨みが乗るのは、飼料にミルクの粉が与えられているからです。

長期間の飼育の手間はもちろんですが、先ずは去勢技術の確率が難しかったとのこと。雛鳥の去勢は非常に難しく、本場フランスでも成功確率は50~70%だそう。それをこの数年で、同じ確率にまで上げたと言うのですから、素晴らしいですね。

タイミング良く、井上シェフがこうして実物を見せて下さいます。

稀少な食材ゆえ初めて見る方も多く、当然のことながら沢山のカメラが向けられます。

秋田県の新しいブランド食材、「あきたシャポン」についての詳細は、こちらのページをご覧ください。
http://www.yonecafe.com/recette/effort/cyapon/

 

そして、お待ちかねの食事です。
井上シェフからメニュー説明を頂きます。


今回は全ての皿に、ワインが1種づつ付いています。もちろん料理との相性を考えられたワインです。

前菜:あきたシャポン、比内地鶏と秋田牛のパテ 3種

左上:比内地鶏と秋田牛のパテ
他の2種のパテと比べ、滑らかで優しいお味です。これには、2番のオイルが合いました。

中:エスニック風味のあきたシャポンのパテ
みっしりした質感に、爽やかにコブミカンの葉が香ります。これには、オイルを掛けずにそのまま。

手前:あきたシャポンのパテ
しっかりした肉を感じるパテ。この強さには、辛み苦みがしっかりとした3番のオイルが合います。

ワインもふんだんに振る舞われた今回、いずれのパテも、こうしてワインと一緒に頂くのには、ぴったり。
「持って帰りたい」とおっしゃる方も。

前菜:比内地鶏モモ肉のフリット ヴェネツィア風マリネ

モモ肉は歯ごたえがしっかりとして味わいがあり、フリットの衣に負けません。
マリネされた赤玉葱の甘い酸味が良く合います。
これには、1番のオイルを。マリネの味わいが更に柔らくなります。

前菜:比内地鶏のトスカーナ風トマトとパンの粥

比内地鶏の出汁が美味しい、贅沢なパッパ アル ポモドーロです。肉の歯ごたえも丁度良い硬さです。
1番のオイルがとても良く合いました。こうした温かい汁物にオイルを掛けると、更に香りが立ち上ります。

プリモ(パスタ):ピエモンテ風 比内地鶏のレバーとサルシッチャのタリオリーニ

全てがそれぞれ美味しいのですが、これらが一体となって更に美味。
サルシッチャ、肉団子のように写っていますが、鶏の旨みが凝縮。レバーは丁度良い火の通りで、砂肝もコリコリして食感を添えます。比内地鶏の卵を使ったパスタ。
ピエモンテではもう少し細い麺タヤリンでするそうですが、試作をし、鶏の味の強さを見て少し太めの麺に変えたそう。

合うオイルは、2番。
香りも添えられますが、何と言っても2番のオイルを掛けることにより、食材全てがさらにまとまるのです。

一緒に頂いたワイン、これも素晴らしいアッビナメントでした。

コントルノ:大麦のリゾット

比内地鶏の出汁で炊いた大麦。
優しい味わいですが、出汁をしっかりと感じます。
上に乗っているのは川芹。
川芹は、あきたシャポンと一緒に食べてもとても美味でした。強さのある鶏にはこうした野草が合います。

セコンド(肉料理):あきたシャポンのローストと炭火焼き

贅沢にも3羽のあきたシャポンをロースト。
しかも、部位ごとに焼き方を変えています。

 

ジューシーな胸肉。

この通り肉汁がたっぷり。これがまた非常に美味で、皆さまそのまま飲んだりパンにつけたりととても好評。

こちらはモモ肉。
皮がパリパリと美味で、肉質はしっかりとしています。噛むほどに味わいが。

ローストには各々お好きなオイルを掛けて頂きました。
ジューシーな胸肉には香りづけとして2番、しっかりした肉質のモモ肉には3番が合いました。

ドルチェ:比内地鶏の卵のクレームブリュレ

決して小さくない器ですが、皆さまあっという間に完食。
やはり、卵ですね。比内地鶏の、黄身が自然な色の卵です。
一般的には濃い色と味わいの卵を産ませるために、飼料に栄養や色素を加えることが多いようですが、これは、あくまでも自然に生まれた卵です。
だから黄身の色合いも薄く、味わいもあっさり。

カラメルがちょうどよいアクセントです。
そして、ここには3番のオイルをたっぷりと。3番のオイルのグリーンアーモンドの香りと、苦みが好相性。


これらの料理をこの日に供する為、井上シェフは試作を繰り返していました。
井上シェフにとっても、あきたシャポンは初めての食材です。しかも、現在はふんだんに手に入るわけではありません。代替え食材を使ったり、想像で補ったりと、本当に何度も試行錯誤を繰り返していました。
たった1日のイベントですが、この日の為に試作で焼いた鶏の数は数羽どころではありません。美味しい料理は、ひらめきやセンスだけでは決して完成しないのだと、改めて思いました。


先々週に続き、2度目の「オリーブオイル&あきたシャポン・比内地鶏セミナー」、今回は特に食材を扱う方々が多く、あきたシャポンをご理解頂く好機会であったとともに、質の高いエクストラバージンオリーブオイルをそれに見合った取扱い方を今一度考えて頂けるようお願い出来る、私にとっても非常に良い機会でした。

2度に渡る、このような良い機会を頂戴出来ましたこと、ワイズキッチンの米本氏に感謝致します。

今回、無事に開催出来ましたのは、やはり信頼出来る店であったこと。井上シェフ始め、大沼スーシェフやスタッフの方々のお陰です。

そして、最後になりましたが、ご参加下さった皆さま、本当にありがとうございました。

秋田県の新しいブランド「あきたシャポン」がこれから益々広がってゆきますように。


ご協力頂いたみなさま
  • Antica Braceria Bell'italia:ありがとうございました。妥協することなく、食材に真摯に向かう姿、勉強になりました。