横浜の人気店「カンブーザ」にて4回目のオリーブオイルセミナーを開催致しました。
初めてのセミナーからもう4年が経ちました。洲脇シェフのお料理はどんどん美味しくなって行きました。でも、モットーは変わりません。
「走り」でなく、「旬」の食材を使うこと。
一番美味しい時の食材を調理して、美味しさを引き出す料理です。
その料理の事は後のパートで。

先ずはセミナーからです。
ご参加者は半数が初めての方。基礎編をベースにお話致しました。

美味しいエクストラバージンオリーブオイルは、どういう工程で作られるのか。何に重きを置いて作られているのか。
オリーブにしか含まれないポリフェノールのこと。
購入、保管、使用の際に気を付けたいこと。etc

今回のテイスティングは以下の4種類です。

今回使用したオイル
  1. イタリア サルデーニャ州オリエーナ 2015年に収穫・搾油された単一品種のオイル(ボザーナ種)。乾燥した大地で有機栽培された実を、清潔且つ効率良く搾油。香りが高く、ポリフェノールが多いボザーナ種の特徴が良く出ている。葉の香り、苦みと辛みのバランスがとても良い。搾油後もう1年経っているが、それを感じさせないクオリティ。(Luna Vera 2015)
  2. スペイン アンダルシア州ハエン 2016年に収穫・搾油されたアルベキーナ種単一のオイル。収穫後4時間以内に搾油されている。収穫が始まった最初の日のオイル。草を刈った時のような爽やかな香り。甘みの中にシャープな辛みが後から出てくる。(First day of harvest 2016)
  3. エクストラバージンオリーブオイルとの表記があるものの、あるべきグリーン(植物由来)の香りは感じられず、酒のようなアルコール臭がある。
  4. イタリア ヴェネト州メッツァーネ・ディ・ソット 2016年に収穫・搾油されたレッチョ デル コルノ種単一。単一のオイルとしては珍しいこのオリーブの実を、収穫後数時間以内に、自社搾油所にて2段階方式で搾油。アーティチョークなどの緑の香りの中に、バナナなどのフルーツの香りが感じられる。心地良い苦みと辛みがあり、料理を引き立てる。(Leccio del corno 2016)

オリーブオイルテイスティングで香りを表現するのは、慣れないとなかなか難しいことです。
ただ、それをして頂くというよりも、初めての方に是非覚えて頂きたいのは、3番のオイルの香り。
アルコール臭や黴臭さがあっては、フレッシュで質の高いオリーブオイルとは言えません。

もちろん何度も経験している方は、香りの例から合わせたい食材までを言って下さいます。
ご自身が普段触れたり食べている食材を思い浮かべながらテイスティングするのは楽しいことです。

オイルの詳細を説明したところで、セミナーは終了。
洲脇シェフから料理の説明を頂きます。

「今は、季節先取りの食材を使う店が多いですが、私は走りの食材はほとんど使わないんです。食材が一番美味しいのはやっぱり旬だと思うんです。」

そう始まった洲脇シェフのお話。

横一列に並べた形の大テーブルでのお食事会スタイル。皆さまの一体感もうまれ、この頃にはもう和やかな雰囲気でした。

料理と共にワインも楽しみになさっている方も多く、お食事の前にワインを選ぶのも楽しい時間です。


料理に合わせるワインは、素敵なメッセージ付きでリストが。

先付:山形県産 雪下人参のクレーマ

甘い人参のクレーマには、お好きなオイルを掛けて。
私は2番のスペインのオイルとの相性が気に入りました。

前菜:皮目を炙った寒サワラのマリネ 菜の花とオレンジ ういきょうのヴィネグレット

ほんのり香ばしく、身質がしっかりしっとりとしていて美味。サワラも菜の花も、そのままの味。ヴィネグレットソースの酸味が効きます。
1番のサルデーニャのオイルを掛けると、バラバラだった食材が綺麗にまとまります。

プリモ(ピッツァ):ジェノヴェーゼ

<ナポリのジェノヴェーゼ煮込み ジャージー牛のクリームヨーグルト モッツァレラ パルミジャーノ 黒コショウ>

切り分けられたピッツァを一切れ取ります。
とろっと煮込まれた豚の甘みと、ヨーグルトの少しの酸味、モッツァレラの甘み、パルミジャーノの塩気、胡椒の辛み。

ここには、苦みの効いた4番のヴェネトのオイルを。
打ち合わせの時に、このピッツァにはこのオイルと、真っ先に決まった組み合わせです。
とても良く合いました。チーズにこのオイルは非常に相性が良いこと、今回改めて確認できました。

プリモ(パスタ):タリアテッレ 熊本あか牛と金華豚のラグー

強すぎることのない、穏やかで滋味ある味わいのラグーです。
トスカーナの有名なオリーブオイル生産者のレシピを再現して頂きました。
トスカーナではキアナ牛を使うのですが、洲脇シェフはそれと一番近いあか牛をチョイス。
そして、ゴロゴロと大きい肉のラグーが今の流行りですが、私が頂いたラグーの通り、細かい肉です。
パスタの為のソースですから、よりタリアテッレに馴染みます。

ここには、1番のサルデーニャのオイル。
これも打ち合わせ通り、ピッタリです。
爽やかな香りを添えて、でも尖ることなく、ラグーに馴染んで全体の味わいを引き締めます。

セコンド(肉料理):アバッキオ(乳飲み仔羊)のバリエーション ローマ風カルチョーフィと赤玉葱の岩塩包み焼き

<骨付きロース肉のロースト、もも肉の炭火焼、肩肉とスティンコの煮込み>
仔羊を一頭丸ごと仕入れ、丁寧に処理し、各部位ごとに調理法を変えて提供下さった一皿。
これが絶品でした。

それぞれの部位で掛け比べるのがまた楽しいのですが、何と言っても2番のスペインのオイルを掛けると美味しさが大きく膨らむのです。
特に、煮込みにはこのオイルが欠かせないのではないかと思うほどの相性。
文句なく、アッビナメント大賞です。

ドルチェ:いちごとみるくとオリーブオイル

料理も可愛らしければ、ネーミングも。
春と冬が一緒になったような、一皿。

シンプルだからこそ、オイルとの相性を探るには絶好のドルチェでした。
2番のスペインのオイルと思ったのですが、4番のヴェネトのオイルがとても良く合いました。
アイスやヨーグルトなど、乳製品に非常に合います。

:ワイン

今回計7種のワインを料理に合わせて、セレクトして下さいました。
その中から、ロゼを頂きました。
フリウリ州のノンドサージュのスパークリング。シャンパーニュのような香りとキリッとした味わい。
ヴェネト州の赤ワイン用の地葡萄を使ったロゼ。ベリーや花など、香りが非常に豊かに広がります。
カラブリア州のロゼは、とても厚みのある味わい。目を閉じたら軽めの赤ワインのようです。仔羊に合わせて頂きました。


以上が、洲脇シェフ始め、スタッフの皆さんが、オイルとの相性を探る為に試行錯誤を重ねて作り上げて下さったメニューです。

当初の予想とは違い、全く合わなかったりもしたそう。
前日ぎりぎりまで試作をし、調整して下さったとのことでした。
私たちが頂く一皿には、本当に沢山の手間がかかっているのですね。


今回、皆さまには横一列にしたテーブルにお座り頂きました。
ご参加の皆さまのお人柄もあり、初対面でありながら、とても和やかで親しい雰囲気の会となりました。
偶然にもお向かい同士の方が同じ街に住んでいたことが分かったり、食はもちろんですが、色々な共通の話題で、初対面の方たち同士で話が弾んでいました。

セミナー後、スタッフから
「とても和やかで良い雰囲気の会でしたね。本当に初対面の方たちなんですか?」と言葉が出るほどでした。

生産者が心を込めて作り上げた素晴らしいオリーブオイルは、食を豊かにするだけでなく、こうして人との交流まで豊かなものにしてくれることに、改めて感動した夜でした。

セミナーにいらして下さった方、お手伝い下さったスタッフの皆さま、オイルをご提供下さった方。
関わって下さったすべての方にお礼申し上げます。

 


ご協力頂いたみなさま