梅雨の晴れ間。
まるで真夏のような日差しと暑さのこの日、外苑前のRistorante HONDAリストランテ ホンダにて、スペシャルセミナーを開催致しました。

このお店では何度もセミナーをさせて頂いておりますが、今回は初の貸切でした。
数年に渡って私の料理レッスンを受けて下さっている方の大学の同窓生を中心とした方々。
もちろん料理レッスンのグループの皆さまもご参加です。
総勢24名の華やかな会となりました。

今までにもご参加下さった方が多数いらっしゃいましたが、初めての方もいらした為、セミナーは基礎編からスタート致しました。
初めての方も、経験者の方も熱心に聞いて下さっていました。

生産者が本物のオリーブオイルを作る為の努力、扱い業者がそのクオリティを保ったまま消費者に届ける為の努力、そして、私たち消費者が質の高いオイルを楽しむ為の理解と工夫。
これらを中心としてお伝え致しました。

セミナー後はテイスティングです。
2016年度のイタリアのオリーブオイルは、南の地域を中心として天候不順の為、生産者にとって大変な年でした。
その状況化においても、素晴らしいオイルを生産する方々がいます。
今回は、その南の地方のオイルにフォーカス致しました。

今回使用したオイル
  1. イタリア シチリア州マルサラ。2016年搾油。ノチェッラーラ デル ベリーチェ、チェラスオーラ、
    ビアンコリッラ、ビディクッダラのブレンド。いずれもこの土地の品種。これらを手摘み収穫した後、即座に搾油。
    バナナの香りやトマトの香りが心地良い。例年に比べ香りは穏やかであり、味わいも同じく柔らか。ナッツのような甘みを感じ、最後に少々の辛みを感じる。
  2. エキストラバージンオリーブオイルには存在しないはずの、酢のような匂いと果物のカビの香りが含まれる。
  3. イタリア シチリア州トラーパニ。2016年搾油。ノチェッラーラ デル ベリチェ、チェラスオーラ、ビアンコリッラのブレンド。イタリアでいち早くオリーブの有機栽培を始めた農園。収穫後、実の温度を上げないため冷蔵場所に置き、3~6時間以内に搾油。青いトマトやヘタの香り、草の香りが爽やかに。味わいはアーモンドなどナッツの甘みから始まり、最後に辛みと苦みを少し感じる。1番と同様、例年に比べ、多少穏やかな印象。
  4. イタリア ラツィオ州ヴィテルボ。2016年搾油。カニーノ種単一。自然派ワインで有名な生産者が作るオイルはもちろん有機栽培。自社搾油所は持たないが、この地域で同じくクオリティ高いオイルを生産する搾油所にて搾油。土着品種カニーノ種の特徴である濃い色と、辛みと苦みが特徴。香りはアーティチョーク、グリーンアーモンドなど。口に入れた瞬間からシャープな辛みと苦みを感じる。適度に持続した後にクリアになる。

通常のレストランセミナーでは、しんと静かになることが多いテイスティング時間ですが、今回は皆さまご友人同士ですから、意見が活発に飛び交います。


真剣且つ楽しみながらテイスティング頂きました。

前述のように、厳しい年だった2016年にも拘わらず、こうしたクオリティ高いオイルを作り出す為の生産者たちの努力を知って頂く為に、1社にフォーカスしたスライドをご覧頂きました。

3番のオイル生産者ティトーネ社です。
有機栽培の先駆けとして有名なティトーネ社はイタリアのシチリア島の最西端の街、トラーパニにあります。

何度も彼らの農園にお邪魔しています。その取り組み、人柄。その結果としてのクオリティ高いオイル。

工業製品でなく、大地から人の力で作られている事を、少しでも身近に感じて頂ければ嬉しいことです。

さて、お待ちかねの食事時間です。

シェフが一品ずつ、丁寧にご説明下さいました。
やはりこうして一皿ごとの説明があると、食べる楽しさが倍増します。

シェフの観点を伺うと、オイルと食材への合わせ方にもとても勉強にもなります。

先付:トウモロコシのビアンコマンジャーレ フロマージュブラン添え

甘味たっぷりのトウモロコシと、ヤギのチーズのムース、玉葱の甘味。
上には塩気のある生ハムがカリッと。

ここにたっぷりと掛けられているのは、バナナの香りとナッツのようなとろみを持つ1番のオイル。
バナナの香りが青みを増して爽やかになりながらも、ナッツのとろみがメインの食材と同調。

これからの食事への期待が更に高まる、美味な突出しです。

前菜:室津産 牡蠣と海水のジュレ 夏野菜のサラダ仕立て

一見、和食と見まがう一品。
軽く火を入れられた牡蠣の上には、夏野菜がたっぷりと乗せられています。
牡蠣の強さに合わせているのでしょうか、ジュレだけでなく、ジュンサイも添えられ、粘り気が野菜をまとめます。

ここには3番のオイルを。
潮の香りに、青いトマトの爽やかな香りが加わり、贅沢な「サラダ」です。

前菜:パートブリックを纏った鮎のコンフィ 加賀太胡瓜とたで酢のサルサ

先ずはパリッと香ばしいパートブリックを噛むと、その後しっとりと柔らかい鮎の身が。
鮎と相性の良い胡瓜の爽やかなソースと、その繋ぎの為に、じゃがいものペーストが下に隠れています。
鮎はコンフィした後に骨を抜き、ワタも使って戻しているそう。

オイルは、ワタの苦みとも同調する4番です。
胡瓜とも相性の良い4番のオイル。隠れているじゃがいもがしっかりとオイルを受け止めます。

香ばしいパートブリック、柔らかく苦みある鮎、胡瓜の爽快さ、じゃがいもの包容。カニーノ種のシャープさ。
掛かっている手間は全て必要だったと納得する、素晴らしい一品でした。

プリモ(パスタ):サルデーニャ産カラスミとアオリイカのスパゲッティ

甘くねっとりとしたアオリイカ、潮の香りと強さのカラスミ、粉の味を感じる太めのスパゲッティ。カラスミを和らげる白いんげんも少々。

3番のオイルをたっぷりと掛けて頂きます。
このオイルは魚介、特にカラスミと相性が良く、このスパゲッティとの相性は言うまでも無く最高です。
このスパゲティの為のオイル、いえ、このオイルの為のスパゲッティです。

更に、本多シェフが「このオイルはパスタの粉の旨みを引き出す」とおっしゃっていました。
小麦の味がぐっと上がって来るのは、それが理由だったのですね。

セコンド(肉料理):タイムとパセリが香る仔羊の香草パン粉焼き

香草パン粉を纏った丁度良い火入れの仔羊。
先ずはパン粉のサクサク感が当たり、次に肉の旨みをしっかりと感じられます。
添えられているソースはカルチョーフィ(アーティチョーク)です。

合わせるオイルはカルチョーフィの香りの4番。
仔羊の肉の強さにもそうですが、ソースを更に生き生きとさせるオイル。
4番のオイルの為の一皿でした。

ドルチェ:アマゾンカカオとジャンドゥーヤのボネ バナナのキャラメラータを添えて

アマゾンカカオの香り高さと、カカオもフルーツであることを感じさせる微かな酸味を纏った甘いジャンドゥーヤと、あっさりとしたミルクのジェラート。
下には香ばしいバナナのキャラメラータが隠れています。

オイルは1番。
カカオと1番のオイルは合うに違いない。と、この組み合わせは打ち合わせの時から決まっていました。
その通り、バナナの香りとナッツのようなまったりした味わいの1番のオイルは、このドルチェに欠かせないものでした。


Ristorante HONDAでのオリーブオイルセミナーはこれで5回目です。
毎回、本多シェフの料理が楽しみでなりません。

テイスティングした時のオイルの香り、味わいから想像を広げ、一つの料理して創造してゆく。
そんな過程に立ち会え、本当に幸運です。

オイルありきの料理、オイルの為の料理、堪能致しました。
ありがとうございました。


食事中は終始、笑い声が絶えない、賑やかで華やかな会でした。

大学時代を共にしたご友人同士、こうしてまた一緒に楽しんでらっしゃること、うらやましく思いますし、何よりも皆さまの明るく素晴らしいパワーに感嘆致しました。
テレビで拝見する有名な方、大会社をクライアントに持つ方、企業を経営したりご家族の仕事をアシストをなさっている方、趣味をプロの域に高め活躍している方、様々なイベントを企画している方、この日の為に新幹線でいらした方。

お忙しい方ばかりがこうして勢ぞろい出来る事、パワー無くしては実現できないと思います。

美味しいオリーブオイルをきっかけに、良い時間を過ごして頂けたのであれば、少しでもお役に立てたのであれば、これほど嬉しいことはありません。

本当にありがとうございました。
またお目に掛かる時を楽しみにしております。


ご協力頂いたみなさま