梅雨が少し切れた日。
中目黒の人気イタリアン「Cuore Azzurro クオーレ アズーロ」にてオリーブオイルセミナーを開催しました。

この店は大好きな店の一つ。
オーナー大貫シェフは、オリーブオイルに対する造詣が深く、昨年にはお店のスタッフを中心とした勉強会も開きました。

その際の、料理とオリーブオイルのペアリング実験がそれはそれは楽しく、これは是非多くの方に楽しんで頂きたいと、大貫シェフと開催を決めた次第です。

先ずはセミナーからですが、平日の夜ですので、あまり長い時間は取れません。
1時間でも2時間でも話たいところですが、凝縮して40分に。
日本市場でのオリーブオイルの位置付け、質の高いオリーブオイルを作るための条件、、、等をお話致しました。

その後はテイスティングです。
いつものように、4種類。

LuceVerdeのテイスティングでは、本物のエキストラバージンオリーブオイルとそうでない物の違いを先ず知って頂き、本物のエキストラバージンオリーブオイルの中でも様々な香りや味わいがあること、そしてその中から好みのオイルを見付けて頂く。
これらを目的として、オイル4種を選んでいます。

今回は以下のラインナップです。

今回使用したオイル
  1. イタリア モリーゼ州カンポバッソ オリーバ・ネーラ・ディ・コッレトルト種単一。2017年収穫・搾油。カンポバッソ地域の土着品種にこだわっている小さな生産者。オリーブの樹はストレスが掛からないよう、十分に間隔を取って植えられている。収穫後のカゴは温度や光を極力避け、数時間のうちに搾油。グリーンオリーブや、グリーンアーモンド、草をちぎった時のような香り。味わいはグリーンオリーブ由来の苦みと辛味がある。
  2. イタリア トスカーナ州トレクアンダ フラントイオ、モライオーロ、オリヴァストラ・セッジャネーゼ等のブレンド。2017年収穫・搾油。シエナ郊外の日当たりと水捌けに恵まれた丘陵地帯で、毎年バランスの良いオイルを作り出す生産者。有機栽培された実を丁寧に、機械+手摘み収穫後、数時間以内に搾油。濃緑の葉、アーティチョークなどの香り。旨みのような甘みや味わいを感じ、最後に心地良い辛味が長く続く。
  3. エキストラバージンオイルと名乗る為には、あるべき芳しい香りはなく、腐りかけた柑橘の香りがする。
  4. イタリア プーリア州ターラント コラティーナ種単一。2017年収穫・搾油。家族で営む小さな農園で土着品種を育てている。バージンオリーブオイル既定の27℃以下をはるかに下回る20℃で搾油。また、真空を保ったまま搾油している。グリーンアーモンドやアーティチョークなどの緑の香りや、胡椒の香り。バランスのとれた強い辛味と苦味を感じる。搾油方法に由来してか、味わいはとてもクリア。

今回も、テイスティング後に、皆さまにどのオイルがお好みだったか伺いました。
この時点での、一番人気は1番。2番と4番はそれぞれ2~3名。

そして、3番を好きと答えた方はいらっしゃいませんでした。「臭い」や、「変な味」との感想が。
全員一致で「おかしい」と感じたオイル。これはエキストラバージンオリーブオイルではありませんでした。

 

実は料理を召し上がった後に、皆さまのオイルのお好みはかなり変わりました。
2番のオイルの万能性に気付いた方。
4番のオイルの素晴らしさに気付い方。
たとえば、4番のオイルはそのまま味わうには辛味や苦味が強過ぎるのですが、オリーブオイルは飲物ではありません。
料理に合わせた時にそれが良いアクセントになりますし、強さも和らぎます。
料理に合わせて初めてオリーブオイルの真価が分かるわけです。

セミナー前半はこれで終了です。後半は料理とのペアリングです。

先ずは大貫シェフからメニューの説明をして頂きます。

どの皿にも、仕上げのオイルは一切掛かっていません。お好みのオイルや、合うと思うオイルを掛けて召し上がって頂きます。
オイルと料理。決定的に合わない組み合わせも存在することは事実ですが、先ずは色々試して頂くことが、今回のセミナーの目的です。

合わせたオイルの番号をそれぞれのメニューに記しますが、絶対的な正解ではありません。大貫シェフと私の嗜好がもちろん入っています。


写真掲載の許可を得忘れましたので、お顔が写っていませんが、皆さま笑顔。料理への期待感、ワクワクが伝わってきます。

先付:Stuzzichini 2種のお通し

カリフラワーのパンナコッタ&黒トリュフ風味のアランチーニ

口の中で溶けるカリフラワーのパンナコッタは、主張し過ぎない2番のオイルと好相性。
カリフラワーの甘みと旨みがより強調されます。

中からとろりとチーズが溶けだす、熱々のアランチーニには、1番のオイル。
トリュフの香りを消すことなく、チーズに合うアクセントに。

前菜:サンダニエーレ産生ハム、マンゴー、ゴルゴンゾーラムース

大貫シェフが「オリーブオイルセミナーにぴったりだと思う」と、当初から決めていらしただけあって、オイルと食材の相性を探るには打ってつけの前菜です。

生ハム、マンゴー、ゴルゴンゾーラムース。
この3つは、もちろん別々に頂いても美味なのですが、添えられたルーコラと全て一緒に頂くと、大きく味わいが広がります。

ここに掛けたのは、2番のオイル。
試食の際にも色々なオイルを合わせてみたのですが、この3つの食材をうまくまとめたのは、断然2番でした。
3つとも強い食材ですが、2番と共に頂くとまろやかで飽きが来ないのも面白い変化です。

前菜:詰め物をした玉葱の岩塩ロースト

この店のスペシャリテ(人気定番)です。
岩塩でじっくりローストした玉葱の中には、レバーペーストが。

玉葱の甘みとローストされた香ばしさが美味で、その中の優しいレバーペーストがまた美味。

これには1番のオイル。辛味と苦味がアクセントになります。
4番のオイルも良いのですが、玉葱もレバーも優しいお味なので、4番だと少し強すぎる傾向が。

プリモ(パスタ):羊肉ラグーソースのカヴァテッリ

もちっとしたカヴァテッリに、とろりと煮込んだ羊肉のラグーが絶妙のバランスで絡んでいます。

オイルを掛けずとも当然ながらおいしいのですが、ここに1番をオイルを掛けるとまた味わいが変化します。
まるで胡椒を挽いたようです。
カヴァテッリの歯ごたえの強さ、羊肉のラグーの強さ、1番のコラティーナ種の強さ。これらの強度が揃い、素晴らしいペアリング。
強さだけではありません。
1番の雑味の無いクリアな辛味と苦味は、丁寧に作られたパスタとラグーを引き立てていました。
絶品パスタです。

セコンド(肉料理):鴨と豚のローストの盛り合わせ

岩中豚と、国産合鴨のローストです。
異なる肉のローストに、合うオイルは同じなのか、違うのか。
そんな楽しみ方をして頂く為の皿です。

鴨のローストには1番か4番。スパイスを添える感覚が、鴨には合うようです。
豚のローストには断然1番のオイル。脂の甘さが引き立ち、オイルを掛けずに頂くより美味。


もちろん、美味しいワインのペアリングもして頂きました。
トスカーナ州のサンジョヴェーゼなど2種の白、シチリア州の白と赤ブレンドワイン、ピエモンテ州のグリニョリーノなど2種の赤。
食事と共に、ワインを楽しんで頂きました。

ここまでで、食とオリーブオイルの相性を探るセミナーは終了です。

今回はグループでのご参加の方も多く、グループ内で気兼ねなく楽しそうにディスカッションしてらっしゃいました。

大貫シェフもおっしゃっていましたが、その楽しそうなご様子を拝見するのが、こうしたセミナー開催の醍醐味です。

スタッフの方たちも、ご自分たちもすでに経験した楽しさですので、お客様たちが楽しいこと、良く理解しています。


お食事が落ち着いた頃。
プライベートでもとても親しくしている2番のオイルの生産者Franco Bardi氏と、ビデオ電話をつなぎ、皆さまがオイルと料理を楽しんでいる様子を中継しました。

遠くから運ばれてくる輸入オリーブオイル。
オリーブオイルを使う方には、こうして少しでも生産者を近い存在に感じて頂きたい。そして、生産者にもどんな風にオイルを楽しんでいるか伝えたい。
そういつも願っています。


最後になりましたが、いらして下さった皆さまに改めて、お礼申し上げます。
本物のオリーブオイルの事を改めて考える時間を割いてくださったこと、有難く思っています。

セミナー時間が短く、大切なポイントは押さえたつもりではいますが、それでもやはり、お伝えしきれなかった事が多々あり、心残りでなりません。
宜しければ、またいらしてくださいね。


ご協力頂いたみなさま