シチリア島のトラーパニのオイルと食を楽しむセミナーを、オリーブオイルセミナーでいつもお世話になっている四谷三丁目のトラットリア ラ ヴィータで開催致しました。

普段のオリーブオイルセミナーと違い、トラーパニのオイルや食、景色を楽しんで頂くイベントです。


シチリア最西端の街トラーパニは、私とって第二の故郷と思うほど、縁と思い入れがある街です。
この夏もここで2週間過ごしました。大好きな生産者「ティトーネ社」にも今回もまたお邪魔し、現社長のアントネッラや、前社長のニコラ氏とのエピソードなども沢山あります。

座学は最小限にして、トラーパニのオイルを中心にテイスティングをしました。

今回使用したオイル
  1. イタリア シチリア州トラーパニ 「ティトーネ社 ティトーネ・ビオロジコ2017」 ノチェッラーラ デル ベリチェ、チェラスオーラ、ビアンコリッラ、フラントイオ、コラティーナ等のブレンド。イタリアでいち早くオリーブの有機栽培を始めた農園。収穫後、実の温度を上げないため冷蔵場所に置き、3~6時間以内に搾油。青いトマトやヘタの香り、草の香りが高く、味わいはアーモンドなどナッツの甘みから始まり、心地良い辛みと苦みを感じる。
  2. エキストラバージンオリーブオイルの表記だが、あるべき植物由来のフルーティな香りは無く、異臭が感じられる。
  3. イタリア シチリア州トラーパニ 「ティトーネ社 DOP ビオロジコ2017」 バッリ・トラパネージの規定に基づいた、ノチェッラーラ デル ベリチェ、チェラスオーラ、ビアンコリッラのブレンド。1と同じく爽やかな香りが高く、味わいは1より強く、辛みと苦みを感じる。
  4. イタリア トスカーナ州バーニョ・ア・リーポリ 「ラメリーノ社 フラントイオ2017」フラントイオ種単一。収穫後6時間程度で搾油。加水せずに練り込みをし、抽出している為、オイルにポリフェノーリが多く残る。フラントイオ種特有の辛味や苦みがしっかりと際立っている。濃緑の植物、野菜の香り。

素晴らしいオイル3種です。いずれも昨年の収穫から1年近く経過しているにも関わらずこのクオリティを保っていること、本当に素晴らしいと思います。

シチリアセミナーではありますが、比較の為とある理由からトスカーナのオイルを入れました。青いトマトや青いバナナ、草のような香りを感じるシチリアのオイルと比べ、トスカーナのこのフラントイオ種はスパイスや濃緑の野菜やハーブを思わせる香りです。
違いをはっきりとわかって頂きました。
2番のオイルがNGであることも皆さま全員が気付いてらっしゃいました。

テイスティングの後は、今回フォーカスしたトラーパニの生産者
ティトーネ社についてを、スライドを見て頂きながらお話しました。
代々薬局を営んできた彼らがオリーブ栽培を始め、有機栽培の先駆けとなり、高品質も求め、今に至っている様子。今のご家族の紹介。など。

オリーブオイルについては、ここまで。この後は、トラーパニのお話を引き続きスライドを見て頂きながらするのですが、勉強ではありませんので、一旦ここで乾杯を。

お好きなワインを飲みながら、トラーパニの街、食、人の写真を見て頂きました。

そして、これで前半が終了。

後半はシチリアディナーです。この夏にトラーパニで食べた味を、須田シェフに再現して頂きました。
ご自身で食べてもいない料理を再現するということ、普通のシェフならばしては下さらないかと。
須田シェフは試作を本当に何度も繰り返し、現地さながらの料理にしてくださいました。

メニューを見ながら説明下さったのですが、「大変だったけれど、楽しかった。飴と鞭を使われました」と。
そんなつもりは無かったのですが、指摘したり、褒めたりしたことでシェフはそう感じられたよう。
お店の常連の方にはシェフと私の掛け合いが楽しかったようです。

 

前菜:前菜盛り合わせ
  1. ペースト トラパネーゼのブルスケッタ
  2. イイダコの煮込みマルコ風
  3. カジキマグロの燻製

1は、今回私がトラーパニのトラットリアで頂いて美味しかったペーストをシェフに再現して頂きました。
アーモンド、トマト、バジル中心のペストトラパネーゼは、昔はもっとニンニクが強かったと思います。今回、優しい味に驚きました。

2は須田シェフがイタリア人男性から伝授されたレシピ。煮込んだ野菜が添えられており、これも優しいお味。

3は夏にトラーパニの市場で買ってきたものです。ワインのお供に最高です。

前菜:パネッレ

ひよこ豆のペーストを揚げたパネッレは、大好物です。
香ばしくて甘みがあって、病みつきになる味。
トラーパニではパン屋さんやバールで買ったり食べたり出来ます。

このパネッレを頂ける店が東京にもいくつかありますが、この夜のパネッレは、トラーパニで頂くものに一番近い味、且つトラーパニより美味。
なぜならば、なんと贅沢にエキストラバージンオイルで揚げているからです。

プリモ(パスタ):クスクス ディ ペッシェ

トラーパニを代表する郷土料理、クスクス。
何行程も掛けて作るクスクスに、魚介の旨みたっぷりのスープを掛けて頂きます。

ヒタヒタにして頂くクスクス。美味でした!
トラーパニのトラットリアで頂くお味です。

これを目当てにご参加下さった方も多く、皆さまとても喜んでらっしゃいました。
初めて食べる味だけれど、どこか懐かしい。
そんな味です。

クスクスはパスタの一種です。アフリカ大陸に近いシチリア。この魚介のクスクスも異国の香りを感じます。粉にもスープにもシナモンが使われています。
通常ここにオイルは掛けませんが、トラーパニのオイルを垂らすとその香り高さを楽しむことができます。

セコンド(魚料理):カジキマグロのインボルティーニ ブラッドオレンジのソース

これはトラーパニではありませんが、同じくシチリア島のアグリジェントの家庭料理だそう。
特徴はブラッドオレンジのソース。
この香りが素晴らしく、実はオリーブオイルの香りは消えてしまいます。それに、焼いた魚もこのソースがあるのでしっとりと頂く事が出来ます。要は、オリーブオイルは不要。

シェフから相談があり、「オリーブオイルを掛けないほうが美味しい料理を出しても良いだろうか」と。
もちろんOKです。
意味の無い使い方はもちろん、料理を損なうようなオイルの使い方はするべきではありません。

とは言え、やはり試してみました。シチリアのオイルは全く会いませんでした。
が、トスカーナのオイルがカジキマグロの中のスタッフィングと良く合い、美味。
土地の料理だからと言って、土地のオイルが全てに合う訳でもなく、イタリア料理だからと言って、全てにオリーブオイルを掛けるわけではもちろんないのです。
実際にイタリアの一般家庭で、出来上がった皿にオイルを掛けて食べている姿は、ほとんど見られません。オリーブオイル生産者くらいです。

ドルチェ:カンノーロ

生地が軽くてサクサク、中のクリームも甘過ぎることなく美味。シチリアで頂くカンノーロより好きです。
日頃からパンの美味しさに定評がある小林スーシェフの作です。


トラーパニの街を感じて頂き、オイルと食を楽しんで頂く夜。皆さまに満足頂けたご様子でした。
これも、何も無いところから作り上げて下さった須田シェフのお陰です。私の説明と写真をスタートにし、試行錯誤の上完成したクスクス ディ ペッシェ。
美味しさだけでなく、シェフの心意気が入っていました。
召し上がった皆さまがシェフの心意気、そして心を感じ取ってらした様子がよく分かりました。

この店の揺るぎない信条、「とにかく、イタリアであること」
その信条通り、イタリアを再現頂きました。


今回は普段に比べ、少人数だったこともあり、アットホームな雰囲気でした。
第二の故郷と思っている街をこうした雰囲気の中でご紹介出来、この街の料理を一緒に楽しんで頂き、この地の大好きなオリーブオイル生産者とそのオイルをご紹介出来た事、この夜を思い出すと胸が温かくなります。

そして、温かさを感じたもうひとつの出来事。
今回ご紹介したトスカーナのオイルは、北海道のインポーターさんが扱ってらっしゃいます。
北海道震災の被害を直接は受けずに済んだものの、その後のオーダーがピタリと止まってしまったとのこと。
北海道内はもとより、やはり流通不安もあるのでしょう、北海道以外も少なくなったそうです。

そんなお話をFacebookで拝見し、何かお力にと思い、このセミナーでお取扱いのオイルを紹介し、ご参加の皆さまにも事情を話して、販売致しました。

今回のオーダー分は完売です。
シチリアのイベントにも関わらず、支援の気持ちを皆さまに頂きました。本当に有難く、ただお礼を述べるばかりです。
ありがとうございました。


オリーブオイルセミナー。
そう聞くと、どんなイメージを持つでしょう。
油の種類の違い、品種のこと、産地のこと、購入時のポイント、料理との合わせ方、、、

確かにそうした事を説明します。でも、それが主ではありません。
私が主催するオリーブオイルセミナーは、主役は「人」です。
ご参加の方々、シェフ、ホール担当、インポーター、生産者。
質の高いオリーブオイルに関わる、全ての「人」。

オリーブオイルを真ん中に、人々が楽しむセミナーをまた次回も開催致します。


ご協力頂いたみなさま