静岡のシェアショップそらまめにて、オリーブオイルセミナー&スペシャルランチを開催致しました。

毎回この外観写真ですが、使いまわしでなく、毎回快晴なのです。

そして、今年も東京から、「リ・カーリカ」の堤シェフと「ベッリターリア」の井上シェフがいらしてフルコース料理を作って下さいました。

30名分の料理を、彼らと、手伝ってくれる方たちに任せ、私はセミナーを。

もう11回目のそらまめでのセミナーです。何度も足を運んで下さっている方たちもいらっしゃいますので、お話に飽きないようアレンジしています。

ここ菊川の名産であるお茶が、数年前からイタリアで大問題になっているキシレラ病に冒されてしまったら、一体どうなるか。自治体は、生産者は。。。
今回はそんな例えからスタート。

テイスティングオイルはいつものように4種類です。
全て2018年搾油のイタリア産です。2018年はイタリアのオリーブオイル生産が何と50%以上もダウンしてしまいました。
イタリアの主たる生産地がキシレラ病の為、伐採を余儀なくされたことや天候が理由です。
そんな厳しい状況の中でも、以下のオイルは素晴らしい出来です。

今回使用したオイル
  1. イタリア トスカーナ州トレクアンダ フラントイオ、モライオーロ、オリヴァストラ・セッジャネーゼ等のブレンド。2018年収穫・搾油。シエナ郊外の日当たりと水捌けに恵まれた丘陵地帯で、毎年バランスの取れた質の高いオイルを作り出す生産者。有機栽培された実を丁寧に、機械+手摘み収穫後、数時間以内に搾油。濃緑の葉、アーティチョークなどの香り。旨みのような甘みや味わいを感じ、最後に心地良い辛味を感じる。
  2. イタリア シチリア州キアラモンテグルフィ トンダイブレア種単一。2018年収穫・搾油。規模とクオリティで有名な生産者。Riservaは彼らの最も良い畑の実を使った上級ブランド。例年に比べると辛味と苦みはマイルドだが、香り高い品種であるトンダイブレアの草や、トマトの葉などの香りが持続する。口に含むとバナナのような味わいがし、喉越しにピリリと辛味を感じる。
  3. 日本の企業が販売。オーストラリアの指定農園から輸入し、日本にてボトリング。品種等不明。それほど強くはないが、緑の葉の香り。味わいはマイルドで、辛みや苦みはほとんど感じられない。
  4. イタリア トスカーナ州 バーニョ ア リーポリ モライオーロ、フラントイオ、 レッチーノ、アメリカーノ種のブレンド。2018年収穫・搾油。畑はオリーブの他、ブドウ、野菜など全て有機栽培。早摘み収穫、収穫後数時間以内に自社にて搾油。30代の若い生産者は搾油機メーカーと共同で研究を続け、より高い品質を目指している。摘んだばかりの茶の香りが漂う。シャープな辛味と苦味を持ち、辛味が持続する。

1、2、4共に素晴らしいオイルです。比較の為に3番を入れましたが、これも悪くはありませんでした。これならば「エキストラヴァージン」のカテゴリーにちゃんと入ります。


しかし、ご参加の皆さんにどれがお好きか挙手をお願いしたところ、3番にはどなたの手も挙がりませんでした。
1、2にかなり多くの手が。4は強いオリーブオイルがお好みの方でした。
相変わらず、ここにいらっしゃる皆さまのテイスティング感度は非常に高いです。

オイルの説明は普段通りのオイルリストの他、今回の生産者紹介は1番のオイル、フランコ・バルディ氏です。

美味しいオイルを作る生産者を訪ねたい。と初めて彼の元にお邪魔したのは2011年。それ以来、何度彼の農園とお宅をお邪魔したことか。
今では「イタリアの父」「日本の娘」と呼び合っています。
この3月に姪とイタリア旅行に行きましたが、その際にも姪を連れてバルディ家にお邪魔しました。
その時の写真も含め、彼の農園、昨年から稼働している搾油所、自宅、食卓、家族の様子をご紹介しました。

フランコは毎年、バランスのとれた良いオイルを生産します。
同じエリアの生産者がそうできない年でも、彼はきちんと良いオイルを送り出してきます。凄いことです。

さてお待ちかねのスペシャルランチタイムです。
シェフたちが作り出す料理に、オイルを合わせながら頂きます。

スープ:キャベツと天然蛤のポタージュ

天然蛤の潮の香り漂う出汁と、キャベツの甘味が絶妙です。
最初に頂く料理としても最高です。

これには1か2のオイルでしょうか。いえ4も良いかと。
私は2をたっぷりと掛けて頂きました。オイルの香りと共に潮と野菜の香りが高まり、更に美味。

前菜:燻製した鶏のフリット 片井農園の紅ほっぺとバルサミコのマチェドニア

鶏のフリットは、鶏が燻製してある為に濃くないのにしっかりとしたお味。
そしてバルサミコの甘みと紅ほっぺの酸味、キュウリの爽やかさ。
美味しくて、もうエンドレスで食べられそうです。

ここにも2番をたっぷりと掛けて頂きました。
鶏にピンポイントで4番を掛けたのも美味でした。
1番も全体に馴染みます。

プリモ(パスタ):平川さんの完熟ローストトマトとバターでつくるスパゲットーニ

ローストしたことで驚くほどに凝縮した平川さんのトマトの旨み、それを受け止める太麺、つなぐバター。
唸るほどの美味しさです。

平川さんはここ菊川市で美味しいトマトを作る生産者です。今回も参加者としてもいらして下さいました。
このメニューは先月、新宿伊勢丹の「世界を旅するワイン展」でやはり平川さんのトマトを使って堤シェフが作っていたものです。

ローストの仕方も非常に大切だそう。

堤シェフもおっしゃっていましたが、バターとオリーブオイルの相性は良いのです。
脂と油。

2番を合わせるのは王道です。4番をアクセントにしても良いです。私は1番をたっぷり掛けて、よりマイルドにして頂きました。

プリモ(パスタ):スズキのラビオリ 蛤の出汁と蕗の薹のふりかけ

これも唸る美味しさ。
つるっと入ってくるパスタを噛むと、中にはスズキのペーストが。これに蕗の薹の苦味がとても良いアクセントに。
蕗の薹は、この日の朝、近所で採ってきたものです。

井上シェフも、オリーブオイルセミナーの際の料理はいつもそうですが、必ずオイルのスペースを空けてくださいます。
食べる方たちが掛けて初めて料理が完成するようなスペースを。

このラビオリも、やはりどのオイルも合います。
蕗の薹の苦味を抑えたいか、それとも辛みを加えてみたいか、香りを加えたいのか。お好みで掛けて頂ければ良いのです。

こうして30名分を一つずつ丁寧に。

 

セコンド(肉料理):山形ひつじやさんの羊の炭火焼とスティンコ 発酵白菜とジャガイモの 付け合せ

山形県の「ひつじや」の羊の腿1本を、2種の調理方法で頂きました。炭火焼きと、スティンコ。
ジンギスカンのお店ですが、ご自身たちで羊を育てているそうです。丁寧に育てている為、臭みなく柔らかい。

炭の香りがするしっかりした肉質に、1番を掛けたり、4番を掛けたり楽しみました。
スティンコには断然1番。
そういえば、初めて1番のオイルのバルディにお邪魔した時に頂いた料理はスティンコでした。

炭火焼きは井上シェフが。ブラチェリア、ですからお手の物。

 

スティンコは時間を掛けて堤シェフが。

何度も何度も、一緒にイベントをしている彼ら。息もぴったりです。

羊を使うことはご参加の皆さまに事前にお知らせしていませんでした。中には嫌う方もいらっしゃる羊肉に対して、堤シェフは少し懸念があったようですが、皆さま喜んで召し上がってらっしゃいました。
地元出身者としては、ちょっと誇らしい。
是非とお願いして良かったと思っています。

「ひつじや」は、ご自分たちの店で使う羊を育てているのであり、出荷するものではありません。たまたま今回1頭頂けたそう。
そのうちの一部をここで頂きました。
こういうお話を聞くと、人だけでなく、食材にも感謝をしなくてはという気持ちになります。
貴重なものを有難く頂戴致しました。

ドルチェ:バナナコッタ

これは堤シェフがもう10年以上前から作っていたドルチェです。
一見、バナナそのものですが、実はそうではなく。

オリーブオイルとの相性はバツグンです。
2番のオイルはバナナの味わいがありますからもちろん良く合いますし、4番の辛いオイルを掛けても合います。緑茶の香りが何とも不思議な美味しいハーモニー。
1番はどうかというと、熟したバナナが青いバナナを食べているような味わいに変化。

堤シェフが「こんなにオリーブオイルに合うドルチェなのに、今までなんでやらなかったんだろう」と。
駒沢のお店では一度やったことがありますが、ここそらまめでは初めてでした。
久し振りにオリーブオイルと合わせましたが、その面白さは最高でした。

 


以上が今回のお料理です。
皆さま、当然ながら大満足の料理でした。

今回、どの料理にもすべてのオイルが良く合いました。1番は常に色々な料理に万能に合うのですが、今回の料理には2番も4番も合わせることが出来ました。
「この料理は何番のオイルですか?」と聞かれる度に困ってしまいました。
厳密に相性を考えることを楽しむ会があっても良いように、今回のように、気分で自由に合わせて楽しむ会は気楽で楽しいですね。

それにしても、「天才!」と何度も思ってしまった彼らの料理。
食材と食材の組み合わせとその組み合わせ方は、無限なのですね。これらかも、まだまだ知らない世界を見せて貰えそうです。

料理の後は、イタリアの朝7時を待ち、中継です。
フランコ・バルディ氏とビデオ通話で、皆さまと繋ぎます。

画像は友人の協力を得て、はっきりと。
音声がなかなか皆さまに聞こえないことが残念でしたが、私もフランコの言葉が良く聞き取れず、何度も聞き返す始末。

でも、フランコを皆さまに紹介出来、フランコにも多くの一般消費者がオイルを楽しんでいる様子を見て貰えました。

長時間の飛行機は乗りたくないから日本には行かない。
というフランコ。こういう形で参加してもらえて良かったと思っています。


お開きのご挨拶。

また来年もこうして出来るよう、頑張りたいと思います。

カメラを向けるとふざけた表情ばかりのお二人ですが、今回のメニューも忙しい日々の中で考えて下さいました。


プロのキッチンでなく家庭のキッチンで30名分の料理を作るには、段取りをかなり考えなくてはなりません。
細かい準備も必要ですし、各店舗のスタッフの方たちのお手も借りています。有難いことです。

ご参加下さった皆さま。
ご協力下さった皆さま。
本当にありがとうございました!


ご協力頂いたみなさま