2019年秋に収穫搾油された新オイル(ノヴェッロ)を楽しむ会を、四谷三丁目のトラットリア ラ ヴィータにて開催致しました。


セミナーでなく、今年のノヴェッロを囲み皆さんでお食事をする会です。
とは言うものの、やはりこの秋にイタリアで感じた事や、2019年のイタリアオイルの状況などを少しご説明致しました。

2018年はイタリアの生産量の多くを占める南地方が大きく落ち込んだ事が理由で、イタリア全体で約6割減でした。それと比較すれば2019年は持ち直してはいますが、今年は主に天候が理由で中部から北の地方が減産。

本当に毎年何かしらあります。もう「例年通り」にはならないのかもしれません。

楽しい会の冒頭ではありましたが、こうして質の高いオイルを頂けることが幸せであることに気づいて頂きたく、お話をした次第です。

さて。
テイスティングです。質を見極めたり、お好みを探したりするためにするテイスティングを、どのようにしたら良いのかを説明しながら、一緒にオイルの香りや味を確かめていきます。

流石、まだ搾油から日が浅いノヴェッロ、いずれも素晴らしい香りです。皆さんにお配りしているときから、トマトをスライスした時やリンゴの皮を剥いている時のようなフレッシュな香りが漂います。
そして、色と質の関連は全く無いとは言え、この時期ならではのオリーブのクロロフィルの緑が非常に美しい。。。

今回使用したオイル
  1. イタリア トスカーナ州シエナ トレクアンダ。フラントイオ、モライオーロ、オリヴァストラ・セッジャネーゼ等のブレンド。2019年収穫・搾油。シエナ郊外の日当たりと水捌けに恵まれた丘陵地帯で、毎年バランスの取れた質の高いオイルを作り出す生産者。有機栽培された実を丁寧に、機械+手摘み収穫後、数時間以内に搾油。2018年から自社搾油所を設置し、より質を高めている。濃緑の葉、アーティチョークなどの香り。旨みのような甘みや味わいを感じ、最後に心地良い辛味を感じる。
  2. イタリア モリーゼ州カンポバッソ コッレトルト。オリーバ・ネーラ・ディ・コッレトルト種単一。2019年収穫・搾油。コッレトルト地域の希少な土着品種であり単一ボトリングはなかなか見られない。生産者は昔からの姿の大地を尊重し、オリーブも自然なままに育てている。収穫後から温度や光を極力避けて搾油所に運ばれる。例年のグリーンオリーブやアーティチョークの香りに加え、2019年はちぎった草の香りも高い。味わいは辛味と苦みが程よくあり、バランスが良い。
  3. イタリア 2019年10月末に搾油されたばかりだが、すでに酸化臭が感じられる。また、実が発酵した香りもある。
  4. イタリア アブルッツォ州キエーティ カプラーフィコ。イントッソ種単一。2019年収穫・搾油。キエーティ地域の土着品種。石灰質の豊かな土壌と、標高500mの冷涼な気候をアドバンテージに良質なオリーブを育て、搾油からボトリングまで徹底的にコントロールし、質の高いオイルを生産。青りんご、茄子など、様々な緑の香りが調和する香り高いオイル。味わいは辛みと苦みのバランスが良く、アーモンドの甘みも感じる。
  5. スペイン アンダルシア州マラガ オヒブランカ種単一。2019年収穫・搾油。紀元前からオリーブ搾油をしていた地域。広大な敷地にはオリーブ畑と森がある。それゆえその土地で完結するバイオダイナミック農法が可能。大型農園によくある大型トラクターを使用せず、オリーブの実が傷つかないよう小さなトラックを使うなど注意を払って収穫し、搾油している。桃やリンゴなどの果物の香りが高く、 心地よい辛味と苦味がある。

テイスティング後にまずはお好みを伺います。
非常に香りのよい4番のオイルに最も多かったように思いますが、1、2、4、5どのオイルにも満遍なく手が挙がりました。

ここで、生産者の紹介を。


この秋に初めて訪ねた生産者、毎年のように訪ねている生産者、、、など。
いずれも素晴らしいオイルを毎年作り出す方たちです。
これだけ気候が毎年不安定な中、安定して質をキープすることは非常に難しいにも関わらず。

生産者の畑や搾油所の写真、彼らのフィロソフィー、一緒に過ごした際の事などを写真を見て頂きながらお話しました。

手に取ったオリーブオイルの背景を知って頂きたく、食事前のお時間を頂きました。

さて、食事会のスタートです。
今回の料理のテーマは「オリーブオイル生産者が搾油所や自宅で新オイルと共に頂く料理」

収穫時期は日中はTシャツで過ごせるほど暖かい日が続くここ数年ですが、夜は流石に冷え込みます。
しかも、良質なエキストラバージンオリーブオイルを作るために、搾油所に暖房を入れるわけにはいきません。
しかも、オリーブの実を洗ったりと、搾油所では水をかなり使います。当然床はコンクリートだったり、タイルですから足元から冷えます。

そんな夜は、搾油所の続きにある小さな休憩室の暖炉に火を入れます。

そこでパンをこんがりと焼いて塩をパラっとふりかけ、搾り立ての翡翠色のノヴェッロをたっぷりと回しかける。


ほかには、近所の肉屋で買ってきたサルシッチャ(ソーセージ)や、豚肉を焼いたり。付け合わせはすぐ隣の畑で取れた野菜。


これらの写真を須田シェフにお見せして、イメージを伝えました。お味はシェフにお任せで。

シェフからメニュー説明を。
今回のテーマに対して、「毎回無茶ぶりで、、、」と須田シェフ。
でも、出来上がった料理はお願いしたかったイメージした通り。
流石です。

前菜:前菜盛り合わせ
  • プロシュートとグリッシーニ
  • フェットゥンタ
  • プンタレッレのサラダ
  • オリーブ漬け4種

イタリアで頂くように焦げ目がついたパンに塩をパラリと。オイルはたっぷりと。
プンタレッレのサラダにはアンチョビが入るところですが、シェフは敢えて省き、レモンと塩のみ。オイルをとても良く感じることができます。

ご参加者の渡辺さんがご持参下さったオリーブ。ご自宅で育てたオリーブの自家製塩漬けです。市販のように大量の苛性ソーダが使われていないので、自然な色とお味でとても美味です。

前菜:カチョカバッロのブルスケッタ

フライパンで焼き、とろっと溶けたチーズをカリッとトーストしたうえに乗せたもの。
お味も良いし、食感のコントラストも最高です。

実はこのチーズ、2番のオイルの生産者Tamaro氏が秋にインポーターさんにお土産として渡したもの。この夜、一同で有難く頂きました。

プリモ(パスタ):ポルチーニのパッケリ

これもある生産者のお宅で頂いた料理です。
ポルチーニとパッケリという組み合わせは新鮮でしたが、香りも味わいも強いポルチーニともちもちのパッケリは非常に相性が良い。

これには2番の爽やかなオイルをたっぷりと掛けて頂きます。
トスカーナあたりでポルチーニに合わせるネピテッラより美味。ネピテッラはちぎって散らすのでどうしても部分的に香りますが、オイルは全てに回るのでどこをどう食べても美味しいのです。

セコンド(肉料理):サルシッチャとカーボロネーロ

まさに、これもイメージ通りです。
炭火でこんがりと焼いたサルシッチャに、シンプルな茹で野菜。

オイルを掛けて完成する一皿です。
サルシッチャはイタリアの塩加減で。オイルを掛けることで、塩味がまろやかになります。
カーボロネーロにもオイルが掛かってより美味しくなります。

これに合うのは1番のトスカーナのオイル。
バシャバシャと掛けたいほどです。

ドルチェ:Muzziのパンドーロ・クラシコ

イタリアのクリスマス菓子パンドーロです。
ご参加者でありヴェネト州のオイルのインポーターさんでもある方が輸入してらして、須田シェフへプレゼント。
これをシェフがこの会でふるまって下さいました。

パネットーネは認知度も上がり、専門店以外でもこの時期に見かけるようになりましたが、同じくクリスマス菓子であるパンドーロはまだまだ少ないようです。
こういう大勢の会で食べきれる時でないと出来ない切り方があります。
それが写真のツリー型。
ご参加者が持参下さった、実付きのオリーブ枝を飾って。

 


ノヴェッロは、搾り立てだけあって香りも味わいも強く、繊細な料理では負けてしまうこともしばしば。
やはり、しっかりとした料理でなくては。

生産者と晩秋に過ごす搾油所や家庭の、寒くとも温かいひと時を皆さまに味わって頂きたくて開催した会です。
やはり、炭火のサルシッチャが真っ先に。
これができるのは、炭火も、イタリアの心も持っている須田シェフです。
La Vitaだからこそ出来た会でした。

偶然にも、食事の最中に1番のオイルの生産者Franco Bardi氏から動画電話が。
イタリア人はメッセージより電話です。時折電話がかかってきます。この時は非常に良いタイミングでした。

イベント中だよ。と、会場の様子を見せたら、とても喜んでいました。
遠い日本で、自身のオイルを美味しいと喜んで食べている姿を見ることは、とても幸せと、以前も言っていました。

今年もBardi氏からオイルをプレゼント頂いていましたので、食事中も皆さまにたっぷりと使って頂くことが出来ました。

食事がすべて終わったところで、予定していたイタリアとの中継タイムです。
今回はモリーゼ州の生産者 Colle D’angio コッレ ダンジョのTamaro夫妻と繋ぎます。

毎回会場が変わりますので環境が変わり、中継は難関ですが、事前のテストで今回はすんなりと接続。

と思ったら本番で、Tamaro氏側がこちらの映像が見えないとの事。
なかなか思い通りにはいかないものです。

ご参加下さっていたColle D’angio コッレ ダンジョのインポーターであるPrimavedaの大槻氏がご自身のスマホをTamaro氏のスマホとつなぎ会場の映像を。

Tamaro氏は慈愛に満ちた方。
大地も樹ももちろんですが、人も大切にする方です。
一度その心に触れると忘れられません。

声と映像がバラバラでしたが、会場の皆さまにはTamaro夫妻の様子が大きく映され、受け答えやお人柄の良さが良く分かって頂けたと思います。


急に冷え込んだ日の夜のノヴェッロ会。

堅苦しい事は抜きで、新物オリーブオイルを祝う気持ちを持ちながら、美味しい食事を頂く会。
立場や仕事は違えど、料理、オイル、ワイン、イタリアが好きな人たちと囲むテーブル。

温かな時間をご一緒下さった皆さま、ありがとうございました。
皆さまの温かいお気持ちを、生産者の方々に戻します。


ご協力頂いたみなさま