2016年の秋にオリーブオイル旅で訪れた初めてのモリーゼ州。
そこで、「パンパネッラ」という料理を始めて食べました。初めてなのに、どこか懐かしい味。すっかり虜になり、この美味しさを少しでも多くの方に知って頂きたいと「大使」としての活動を始めました。

今回は久し振りにそのパンパネッラ大使のお勤めです。

場所は武蔵関の「オップラ! ダ ジターリア
シェフはずいぶん以前からオリーブオイルに目覚め、良いオイルだけ使ってらっしゃる野間シェフ。打合せでも、長年良いオイルと向き合って来た方の感覚であることが、すぐ分かります。

元々、今回はジターリアのスタッフの皆さまのオリーブオイル勉強会から、お話が始まり、平日開催となりました。
ただ、もし平日でもいらっしゃれる一般の方が居れば、ご参加頂こうと少し募集の枠を拡げました。

少数精鋭だった今回。スタッフの方はもちろんですが、一般の方たちもイタリアやオリーブオイル、食に造詣の深い方ばかり。

先ずはパンパネッラ講習会からスタート。肉、焼かないといけませんからね。
パンパネッラはシンプルな料理ですが、使う食材が日本では入手困難。
でも、今回は昨年11月にモリーゼに行った際にテルモリの師匠から分けて頂いたペペロンチーノドルチェの粉と、麦藁紙カルタパーリアがあります。


豚肉は現地では1頭分使いますが、今回は肩ロース2kg強。野間シェフに前日夜から室温にしておいて頂きました。

カルタ・パーリアで覆って焼くので、火が当たらず表面がパリっとは焼けませんので脂身が多いとしつこくなる為、表面の厚い脂だけそぎ落として貰っていました。私が実演するつもりでしたが、結局私は隣で説明して、作業はほとんど野間シェフが。
ペペロンチーノピッカンテと、ドルチェを混ぜたっぷりとまぶしていきます。マスク越しでも、香りが皆さんに届きます。下ごしらえが終わったら予熱しておいて頂いたオーブンへ。

詳しい作り方はここでは省きます。知りたい方は個別にお問合せ下さい。

そして、ここからオリーブオイルセミナーのスタートです。

2022年の地中海沿岸は非常に不作と予測されています。
イベリア半島は25~50%減、イタリアも37%減の予測です。

数字が大切なわけでは無いのですが、毎年必ず決まった量を望めるわけではないということを皆さんに理解して頂く為に、必ず、最新データをお伝えするよう心掛けています。

食関連の情報を多めにお話をして座学は終了。テイスティングです。
皆さん、テイスティングに興味をお持ちでした。
座ってオリーブオイルだけをテイスティングすることは、飲食店で働いていても、そうあることではないかと。

今回のラインナップは以下。

今回使用したオイル
  1. イタリア リグーリア州インペリア県イゾラボーナ タッジャスカ種単一。 2021年収穫・搾油。家族だけの経営の小さな生産者。農園は海抜150mから550mも標高差があり、約2000本のタッジャスカを栽培している。収穫後は直ちに自社搾油所にて搾油。タッジャスカ種のオイルは通常完熟してから搾油するため、マイルドで、ともすると酸化ギリギリの物が多いが、早摘みすることで笹の葉や蕪、熟す前のリンゴなどの香りを持ち、辛みや苦みも持ち合わせる。[S'ciappau / Paolo Cassini]
  2. イタリア シチリア州ラグーザ県キアラモンテグルフィ トンダイブレア種単一。2022年収穫・搾油。この品種はシチリア東部を代表する品種であり、その香りの高さはイタリアのみならず、世界の品種の中でもトップクラス。暑いシチリアの大地でオリーブの樹に無理させることなく、果樹等と一緒に自然に育てている。栽培方法は昔からの伝統を守り、搾油は先端の技術と化学知識を取り入れているシチリア最大の搾油所に依頼している。トマトの葉や青いトマトの香り、またバナナなど果物の香りも。[Pantaleo DOP /Terre di Pantaleo]
  3. イタリア 場所不明 オリアローラ種単一。2021年収穫・搾油。イタリア産オイルを輸入し、ある商社が自社ブランドとして販売。
    エキストラバージンオリーブオイルの表記はあるものの、酸化臭と発酵臭がダイレクトに鼻につく。
  4. イタリア モリーゼ州カンポバッソ県コッレトルト ルミニャーナ種単一。2022年収穫・搾油。スローフード協会でも有名な生産者。忘れられた品種を大切に育てる彼の農園にはオリーブ研究者の訪問が後を絶たない。素晴らしい人格ゆえ多くの人から信頼され愛されている。先端の知識・技術をベースに、何よりも自然のままの大地と樹を大切にすることが彼のオイルのクオリティを高めている。早摘みゆえポリフェノール由来の苦味が特徴。香りはちぎった草や、グリーンアーモンド、熟す前の固いリンゴなど。辛味と苦みのバランスが良い。[Rumignana / Tamaro Colle D'Angio]

1種、残念オイルを入れました。流石、皆さん3番のオイルに違和感をすぐに感じた様子。

それ以外はどれも非常に素晴らしいオイルです。例えば1番のオイルは2021年の秋に搾油してます。もう1年以上経つにもかかわらず、フレッシュな香りと味わいが素晴らしい。
2番は香り高い品種。今年も素晴らしい香りと味わいです。
4番は昨年秋にもお世話になった、モリーゼ州の生産者のオイル。今年も苦みと辛みがガツンと来るオイル。一番人気でした。

途中、何度かパンパネッラをチェックしながらセミナーを進め、テイスティングでセミナー終了。

 

ここからは、オイルとの相性を確認しながら料理を頂きます。

前菜:前菜盛り合わせ

盛り合わせは以下の4種。皆さんにはお好みのオイルを掛けて頂きます。

  • カーヴォロネーロのクロスティーニ 
    くたっと煮込んだカーヴォロネーロをカリッとトーストしたパンにたっぷり。流石、ピッツェリア、パンも美味。
    オイルは1番か4番が良いかと思います。2番は香りが高すぎて、カーヴォロネーロの香りが消えてしまいます。
  • マグロ赤身の炙り サリーナ島のケッパーソース
    とっても美味でした。これは1番、または2番でも良いかと。1番は味で合わせる。2番はシチリア同士で合わせる。
  • おかざき農園フルーツトマトと人参、フィノッキオのサラダ
    そのままでも美味ですが、2番のオイルを掛けるとトマトの香りと、人参の甘味が増幅。
  • 仔羊とパプリカ、白インゲン豆のモリーゼ風煮込み
    これも美味。4番のオイルを掛けると更に食材同士が馴染みます。

 

プリモ(ピッツァ):有機栽培ダッテリーニトマトのマルゲリータ

軽やかな生地に濃厚なトマト、バジルの香りがスパイス。

2番のパンタレオを掛けると、トマトの旨味が前面に出てきます。

 

プリモ(パスタ):黒毛和牛ランプレドットのラグー パスタ アル チェッポ

ランプレドットのラグーが、何と言うか穏やかな美味しさ。美味しく煮込まれたランプレドットが、小麦粉の味がしっかりしたパスタとちょうど良い。

ここには、強めのオイル。ということで、4番。掛けた方が断然美味しい。

プリモ(パスタ):クロゼッティ 松の実とパルミジャーノのソース

贅沢に、パスタ2種め。
松の実とパルミジャーノのペーストだけだと、まったりしているので、オイルを掛けるとスパイス代わりになって、メリハリが付きます。

セコンド(肉料理):パンパネッラ

さて、お待ちかねのパンパネッラです。
私がセミナーしている間も、しっかりと野間シェフがチェックして下さっていました。

焼けてからしばらくそのまま置いて、馴染んだところです。
カルタ・パーリアを取ると良い感じに焼けたパンパネッラが現れました。
初めて召し上がる方も多く、期待に満ちた歓声が。

現地の味に限りなく近く焼けたと思います。

「美味しい!」があちこちから聞かれました。
多めに用意してもらったのですが、完食。

ドルチェ:オリーブオイルケーキとバニラジェラート

オリーブオイルケーキは、私も大好きなBardiオイルを使ったそう。
今日本にあるのはNovelloですから、贅沢ですよね~

もちろん掛けるオイルはBardi
テイスティングラインナップには入っていませんが、このお店の定番オイルです。

 


とても美味しく、且つ、オリーブオイルを感じるにはとても素晴らしい料理でした。
野間シェフの料理は、食材が過不足なく組み合わさっていて、且つ、オイルが入る「隙間」をちゃんとあります。それゆえ、「掛ける」ことは、「足す」のではなく、「補う」ことになります。

今までに何度もLuceVerdeのセミナーに参加下さっている方も、「オイルとの相性を確かめるにはぴったりですね」と、仰っていました。


パンパネッラとオリーブオイルの事を伝える会。
どんな時でも、ご参加下さっている方に全力で伝えますが、今回は飲食店のスタッフの方が大半でしたので、特にパンパネッラを正確に伝えたい気持ちがとても強く。
カルタ・パーリアも皆さんにお分けしましたので、きっと正統派のパンパネッラが、今後多くの方に召し上がって頂くことが出来ると思います。

パンパネッラ大使のお役目、果たせたかと。

最後になりましたが、ご参加下さった皆さま、ありがとうございました。
オップラ!ダ ジターリアの皆さま、美味しいお料理と、スムーズなアシスト、感謝致します。


ご協力頂いたみなさま