地元である静岡県で、オリーブオイルセミナーを久し振りに開催出来ました。

今までのようにキッチン付きの会場でなく、フレンチレストランでの開催です。西欧料理サヴァカさんはジビエ料理で有名。都内を始め、日本各地から山口シェフの料理を求めてお客様がいらっしゃいます。

今回もお料理コースには菊川産の猪や、菊川産の野菜など、地元の食材がふんだんに使われていました。
お料理の詳細はセミナーレポートの後半で写真と共にたっぷりとご紹介いたします。

先ずはいつものように基礎編の講義から。プロジェクターを見て頂くには、少々不向きな環境ではありましたが、スライドを見て頂きながら説明しました。使っている写真や全て自分で撮り、データは出典を明らかにした上でグラフなどにしています。

エキストラバージンオリーブオイルを理解して頂く為には、畑からパッケージに詰められるまでをご説明するのが一番です。
農作物であること、生鮮食品と変わりないこと。などをご理解頂きたいのです。

座学の後はテイスティングです。今回も4種。
テイスティングの方法をご説明しながら、一緒にテイスティングしていきます。今回のラインナップは以下です。

今回使用したオイル
  1. 日本 静岡県菊川市。タッジャスカ、ペンドリーノ、フラントイオ、レッチーノ種のブレンド。2015年から兼業でスタート。耕作放棄茶畑を耕し、2016年に12本のオリーブを植え、現在では150本に増えている。オリーブの葉や大根など、苦みや辛味を連想させる香り。アーモンドの甘みから始まり、苦みと辛みがある。日本のオリーブオイルはマイルドな味わいが多いが、このオイルにはしっかりとした苦みと辛みが存在し、且つ持続性もある。強めの料理にお勧め。[12olives/Extra virgin olive oil]
  2. イタリア シチリア州ラグーザ県キアラモンテグルフィ。トンダイブレア種単一。トンダイブレア種はシチリア東部を代表する品種であり、その香りの高さはイタリアのみならず、世界の品種の中でもトップクラス。暑いシチリアの大地でオリーブの樹に無理させることなく、果樹等と一緒に自然に育てている。栽培方法は昔からの伝統を守り、搾油は先端の技術と化学知識を取り入れているシチリア最大の搾油所に依頼している。トマトの葉や青いトマトの香り、またバナナなど果物の香りも。[Pantaleo DOP /Terre di Pantaleo]
  3. イタリア。オリアローラ種単一。イタリア産のオイルを日本業者が輸入販売している。味わうとポリフェノールと思しき苦みと辛みはあるものの、先ずネガティヴな香りが先に立つ。油を放置した時の香りや、発酵臭が感じられる。
  4. イタリア エミリア-ロマーニャ州ブリジゲッラ。ノストラーナ・ディ・ブリジゲッラ、ギアッチョラ種のブレンド。イタリアの美しい街100選にも選ばれたブリジゲッラの土着品種2種のブレンド。また、それぞれ樹齢100年以上のオリーブの実を使用している。この生産者はもともと心理学者であったが、1997年に一念発起し、自然派ワインとオリーブ栽培を始めた。香りはちぎった草や、グリーンアーモンド、熟す前の固いリンゴなど。辛味と苦みのバランスが良い。今年から日本で発売される。2023年6月下旬発売予定。[OLIVETA/Az. Agr. Filippo Manetti]

昨年秋に菊川市産のオリーブオイルを頂いた時、そのクオリティに驚きました。日本のオイルは香りも良く、美味しいのですが、苦みと辛みはあまり強くありません。ブラインドテイスティングしたら、トスカーナやウンブリアあたりのオイルと判断したと思います。

そして今年から日本で発売予定のブリジゲッラのオイルも非常にクオリティが高いのですが、今回初めて料理と共に頂き、思った以上に色々な料理に合わせやすいことが分かりました。
いつものように、どれがお好きか伺いましたが、1、2、4それぞれに手が挙がりました。すべてに挙手なさっていた方も。
3番のオイルには違和感をお持ちの方が沢山いらっしゃいました。

各オイルの説明をして、セミナーは終了。お待ちかねのお料理スタートです。先ずは山口シェフからメニューの説明を頂きます。
流石、食材コーディネートもなさる山口シェフ。食材の説明が素晴らしい。知らない事がいっぱいでした。

先付:御前崎産の天然ブリのスモーク 山菜と自家製カラスミのマリネ

御前崎産のブリは、産卵前のこの時期だけ脂が乗ってとても美味しいのだそう。
確かに脂が乗ってます。それを軽くスモークしているので、この小さなグラスの中に香ばしい香りが満ちています。
このスモーク香に対抗できるのは、2番の香り高いトンダイブレア種です。
そのまま頂いてももちろん美味しいのですが、キャビアやカラスミなど個性的な食材がこの小さなグラスに詰まっていますので、2番のオイルがその食材たちを纏める役目も。

前菜:前菜①
  1. 菊川産ホワイトアスパラ
  2. 平川さんのぷちぷよトマト
  3. 裏山の筍のサラダ
  4. 国産トリュフ入り仔鹿のブータンブラン

1~3までは全て菊川産。シャキシャキのホワイトアスパラと、まるでさくらんぼのような食感のプチトマト。従来から平川さんは皮が口に残らないプチトマトを目指してらっしゃいました。その通りのトマトです。
筍は裏山でシェフが掘って下さったもの。えぐみなどは全く無く、筍の良い香り。
そしてブータンブランが美味しいこと。ジビエと言うと、強いイメージがありますが、これは本当に優しいお味。

さて、これだけ様々な食材、どうオイルを合わせようか悩みます。悩んだ結果、産地合わせで1番のオイルを。それぞれの食材に色々なオイルを合わせていらした方も。楽しいですね。

前菜:ジビエコンソメと春野菜のポトフ仕立て 天然えのきたけときくらげ

コンソメが本当に美味。丁寧に作ってらっしゃる事が分かります。
春野菜と言っても、ほとんどが山菜です。土筆や蕨、そしてタラの芽。フリットが良いアクセントです。天然エノキもキクラゲも歯ごたえがあって美味。
これには山のオイルである4番のオイルをたっぷりと掛けました。掛けた方が断然美味しくなりました。不思議ですね。

セコンド(魚料理):鮮魚"サクラマス"のポワレ ハーブバターのソース

元々地元の魚の予定だったのですが、海は時化。急遽、北海道のサクラマスに変更したとのこと。
山口シェフは北海道に住んでらしたこともあり、北海道の食材にも造詣が深いのです。
歯ごたえあるグリーンアスパラに、カリッとフワッと焼かれたサクラマス。
ハーブバターの強い香りもあり、掛けるオイルを迷いました。
迷った結果、1番。食材の香りを引き立てました。

セコンド(肉料理):菊川産仔猪のロティ 静岡県産アミガサタケのクリームソース

ロティされた仔猪の上に、母猪のスモークが乗っています。ロティはさっぱりしていて美味ですし、猪のスモークの脂が美味しいこと。大根が上手く使われていて、濃厚になり過ぎません。
これには4番オイルをたっぷり。猪の脂の甘みが引き立ちます。4番のオイル、思った以上に色々な料理と相性が良い事が発見出来ました。

ドルチェ:紅ぽっぺのプランタニエール

プランタニエールとは「春めいた」というような意味だそうです。
春のいちご畑のような一品。ホワイトチョコやタピオカココナッツミルクなどがいちごの酸味を引き立てます。

これにももちろんオイルを。2番。流石トンダイブレア種、青々とした香りが加わり、いちご畑に緑が現れました。


フレンチレストランでのオリーブオイルセミナーは初めてでした。
バターを使い、ソースできちんと味を決めるフレンチにオリーブオイルが入る隙はあるのか。。。
と思っていた時期もありましたが、バターもソースも一つの食材と捉えれば、良いのですよね。

今回は新しい発見が沢山ありました。
そして、ジビエというと強いイメージをお持ちの方はまだまだ沢山いらっしゃるかと思いますが、豚が養殖だったら、猪は天然と思えば同じですね。

正しい個体を選び、それに合った調理を施せば美味しい料理になる事が山口シェフの料理を頂き、改めて理解しました。


今回は土日の夜連続でしたが、いずれも食通の方、食を生業としている方、食関連の研究をなさっている方など、食への意識がかなり高い方ばかりでした。
そういった方々にもきちんと説明が出来るよう、まだまだ勉強が必要と改めて思いました。

ご参加下さった皆さま。ありがとうございました。
そして、素晴らしい料理を提供下さった山口シェフとキッチンのスタッフの方々、サポートをして下さったホールの大石氏に感謝致します。


ご協力頂いたみなさま
  • 西欧料理サヴァカ:地元食材を使った素晴らしい料理のご提供、ありがとうございました。
  • ディスコイタリア:サンプルオイルのご提供、ありがとうございました。4番のオイルです。