春を飛び越して初夏のような温かさの土曜日。
外苑前の「Ristorante HONDAリストランテ ホンダ」にて、4回目のセミナーを開催致しました。

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初めてご参加の方、何度目かのご参加の方、ちょうど半々でしょうか。

今回はプロジェクターを使い、生産者を訪ねた際に撮った写真をお見せしながら、オリーブオイルが出来るまでをご説明いたしました。
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オリーブオイルが搾油される様子は、日本ではなかなか見学の機会はありませんので、やはり写真があった方が分かりやすいですね。
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エクストラバージンオリーブオイルとはどういう物なのか。
どんな所で美味しいオリーブオイルが買えるのか。
何に気を付けて保管、使用したらよいのか。
ココナッツオイルやフラックスオイルとの違い。
etc
毎回の事ですが、山のようにあるお伝えしたい事から、何を選び、どう時間内にお話するか、本当に悩みます。

何かまだお伝しそびれた大切な事があるのでは、、、と、不安に思いながらも、いつものようにテイスティング開始です。
2015年度のオリーブオイルは押し並べて良い出来です。その中でも、お気に入りの生産者たちのオイルを、一般市場より一足早く味わって頂きました。

今回は4種です。
前回、前々回は、6種でしたが、やはりテイスティングは1度に4種までが理想です。
本多シェフと相談し、今回は数を抑えることにしました。

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今回使用したオイル
  1. イタリア ヴェネト州メッツァーネ・ディ・ソット 2015年搾油 グリニャーノ、ファヴォロール、他、土着品種のブレンド。収穫後、自社搾油機にて搾油しダイレクトに濾過している為、非常にクリアな味わい。爽やかな香りと、適度な辛味がある。
  2. イタリア シチリア州キアラモンテグルフィ 2015年搾油 トンダイブレア種単一。手摘み後数時間以内に自社搾油所にて搾油。若草やトマトの葉など、とても香りが高い。
  3. イタリア トスカーナ州トレクアンダ 2015年搾油 オリヴァストラ・セッジャネーゼ単一。有機栽培された貴重な原種。手摘み+機械で丁寧に収穫され、数時間以内に搾油。草やハーブの香り。様々な味わいを感じるがバランスが非常に良い。強すぎない適度な辛味と苦味も持つ。
  4. 残念なオイル 酸化臭が強く、発酵臭も少し感じる

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テイスティング後は、1番と3番の生産者の農園、搾油の様子、ご家族のプロフィールも含め、写真をお見せしながらご紹介しました。

オリーブオイルの背景。
どんな人たちが、どう育て、どう作っているのかを知る事は、オリーブオイルについて理解を深める為に役立つと思います。
オリーブオイルは作り手次第で、クオリティが大きく変わってしまいます。
情熱も大切ですが、情熱だけでは本物のオイルは出来ません。冷静な判断力と、化学に基づいた知識、経験、人間力。あらゆる事が必要になります。

そうした力を持つ素晴らしいオリーブオイル生産者をご紹介し、セミナーは終了。

お食事の時間です。
過去3回のセミナーでも、素晴らしいお料理を提供下さっている本多シェフ。
皆さまの期待も高まります。

先付:アミューズ1 鶏の白レバー 芽キャベツ ピスタチオ

レバーのムースが、芽キャベツの小さな葉に覆われています。
手でつまんで頂きます。
小さくともしっかりしたキャベツの香り、ムースの甘味、下に敷かれた砕いたピスタチオ。

stuzzichinoです。お食事前のおつまみで、気分が盛り上がります。
特にオリーブオイルは使われていませんし、提案もありませんが、3番のオイルがレバーとよく合いました。

先付:アミューズ2 新玉葱 黒トリュフ

下には新玉葱のムース、上には新玉葱のメレンゲ。そして黒トリュフが。
1番のオイルを少しだけ掛けて頂きます。
小さく一口頂くだけで幸せな甘味と旨み、そしてトリュフと焦し玉葱の香りが広がります。

シェフが「沢山オイルを掛けると、辛味が強くなってしまうので、少量で」と説明下さいました。
少量であれば、新玉葱の甘味を引き立たせますが、過量だと、玉葱が甘いだけにオイルの辛味が目立ってしまうのです。

全てのバランスが計算され尽くした、小さくも広がりある大きな世界でした。

前菜:冷前菜 サヨリ ふきのとう アンティーブ

手前のサヨリのカルパッチョは、素晴らしい具合に施され、舌に纏わりつくようです。
上にはほんの少量のオレンジパウダーと、蕗の薹のクロッカンテ。
ここに、2番のオイルを入れることで、それらが馴染みあい、絶妙な味わいに。

オレンジで煮たアンティーブは甘味が引き出され、苦味ある蕗の薹と白みそのペーストに包まれています。
これにも2番を掛けるのですが、今度は苦味を引き立てる役です。

春の美味しい一皿でした。

前菜:温前菜 イカスミ うに 白ポレンタ

この3つの食材に2番のオイルが、それぞれ違う役目をしながら寄り添います。
イカとイカスミにはその香りを持ちあげ、ウニにはその甘味を引き立て、ポレンタには辛味を足す。
唯一足りない、酸味。これをピューレ状の濃いトマトが補います。

別々に頂いても、全て一緒に頂いても、綺麗に調和する美味な皿でした。

プリモ(パスタ):冷製 ブッラータ 苺

苺の酸味と甘みと香り。加えて木苺のスキューマ。これをカッペリーニで絡め取って頂きます。
合わせたオイルは2番。たっぷりと掛けて頂きます。

2番のオイルの香りはフルーツやトマトの香り。
苺とも相性が良く、お互いの香りを増幅します。

フルーツとパスタの組み合わせは、あまり好きではあません。特に苺は香りが強すぎ、パスタとは合わないと思っていました。
しかし、これは別格。穏やかな香りと味わい。非常に美味しい冷製パスタでした。

この組み合わせは、打ち合わせの時から本多シェフが考えてらしたこと。2番のオイルをテイスティングし、これは苺と合わせたらいいね。と。
おっしゃる通り、素晴らしいアッビナメントでした。

もうひとつ素晴らしいアッビナメントが。
彼ノ矢ソムリエがこの皿に合わせたワインが、トスカーナのロザート。これがまたこのパスタに非常に良く合いました。
単体で飲むよりもはるかに、味わいが上がります。
グラスの中に、食べている苺の香りも漂います。皿、グラス、皿、グラスの往復が楽しくてたまりませんでした。

:猪 黒キャベツ ヘーゼルナッツ

猪と言わなければ豚と思う、クセの無い国産の猪。
下に敷かれた国産のカーボロネーロは、苦味は少なく甘い。共に優しい味わいゆえに、ちょうど良い組み合わせです。

これには3番のオイルを掛けます。
草やハーブの香りが、甘い脂身のアクセントになり、赤身には油を補います。
添えられているカーボロネーロとピスタチオのソースの甘味にも好相性です。

ドルチェ:完熟バナナ 70%カカオ グラッパ

バナナはサヴァイオーネの下に隠れています。更にその下には、グラッパにつけられたプルーン、そして2番のオイル。
素晴らしいハーモニーでした。

上からも2番のオイルを掛けます。
先ほど同様に、2番のオイルはフルーツの、ここではバナナの香りを増幅します。

少し前までは、セミナーでも「ドルチェにもオリーブオイルを掛けるんですか!?」と聞かれたものです。
確かに、必要の無いところに掛けることはありません。
しかし、このドルチェは、オリーブオイルがあって、いえ、2番のオリーブオイルが入って、初めて完成するドルチェでした。

彼ノ矢ソムリエがこのドルチェ用に選んだのは、スペインのシェリー。
香りと色からヴィンサントと思い、口に含んだらキリリと辛口。
このドルチェ、シェリー、また素晴らしい組み合わせでした。

プチフール:プチフール4種

食後のお飲物と一緒に出される、小さなお菓子。
これも、ひとつづつ丁寧に作られています。


これで、幸せな食事時間の終了です。

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今回、本多シェフは一皿ごとに、とても丁寧に料理の説明をして下さいました。どんな食材がどう調理されていて、何故このオイルと合わせたのか。
たった一皿づつの説明ですが、到底一度では覚えきれないほどでした。

一皿に入っている食材、掛けられている手間、込められている思い。その皿を頂きながら聞くことが出来るのは、本当に贅沢な事だと思います。

専門的な事では無く、ご自身の食生活も交え、食について楽しくお話下さり、皆さまもとても嬉しそうでした。

セミナーに何度かご参加下さっている方が、こう書いてらっしゃいました。
「オリーブオイルで料理が引き立つのではなく、今回はオリーブオイルは影武者。料理と一体化していると感じました。」
その通りだと思います。

オリーブオイルは調味料でもありますが、先ずは、食材でもあります。
一皿を造りあげる時、他の食材と同等にオリーブオイルをピースとして組み込んで下さった料理が今回は目立ちました。
組み込みながらも、きちんとそのオリーブオイルを感じられる料理でした。

この緻密な計算と、丁寧な再現。本多シェフの真骨頂です。

素晴らしい料理の数々、ありがとうございました。

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スペースの関係で、両端の方が切れてしまっていることが残念ですが、Ristorante HONDAでのセミナーで、初めて全体の写真を収めることができました。

今回、1番と3番の生産者から、特別に、オイルを航空便でご提供頂きました。
彼らにセミナーの報告用に写真をと、私から皆さまにお願いをしたのですが、お願いしやすい雰囲気の昨夜でした。

本多シェフがホールに居て下さる時間が長かったことや、ご参加下さった皆さまが和やかに繋がって下さったからでしょうか。

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セミナーも、とても熱心に聞いて下さり、お食事中もオリーブオイルへのご質問や興味が尽きない方々でした。

毎回、セミナーは緊張致します。でも、皆さまが真剣に受け止めて下さっている事が伝わって参ります。
私も、決められた時間に出来るだけ沢山の事と、沢山の思いをお伝えしたいと思います。

こうして素晴らしい場で、オリーブオイルについてお伝えする時間を与えて頂けたこと、心から感謝致します。
ありがとうございました。


ご協力頂いたみなさま
  • RISOTRANTE HONDAリストランテ・ホンダ:素晴らしい料理、ワイン、スムーズなサービスのご提供をありがとうございました。素晴らしいお店でセミナー開催できますこと、光栄です。
  • VERZEN:Grazie per la sua offerta e l'olio eccelente. 美味しいオリーブオイルのご提供をありがとうございました。1番のオイルです。
  • AZ. AGR. CARRAIA DI BARDI FRANCO:Grazie per la sua offerta e l'olio eccelente. 美味しいオリーブオイルのご提供をありがとうございました。1番のオイルです。