西麻布のイタリアン「cucina 13 aprileクチーナ トレディチ アプリーレ」にて、オリーブオイルセミナーを開催致しました。ご参加下さった皆様、ありがとうございました!

当初、ランチのみの予定でしたがあっという間にお席が埋まり、同日にディナーの部も開催することに。

LuceVerde

普段のLuceVredeのセミナーと比べ、今回はお店の常連の方々からのお申込みを本当に沢山頂戴致しました。お店のファンの多さとその実力に、セミナー前から脱帽です。

 

 

 

 

 

 

 

LuceVerde

 

素材にこだわりを持つお料理を召し上がっている皆様、オリーブオイルについてもやはり真剣です。

昼の部は和やかにそして賑やかに、休日のランチタイムにふさわしい、明るくゆったりとした時間の中でセミナーが進みました。
私もとてもお話しやすい環境で、リラックスした良い時間を楽しむことが出来ました。女性がほとんどでしたので、健康や美容のことなども盛り込みお話を。
cuci0713-20

 

夜の部は男性率が高く、半数近くが男性。それもあってか普段より落ち着いた雰囲気でした。オリーブオイルについての基本のお話に加え、どう作られて輸入されてくると質の高いオリーブオイルになるのか、そして日本のオリーブオイル市場の現状などを、熱心に聞いて下さっていました。

 

cuci0713-21

後にアンケートを拝読すると、「思っていた以上に詳しい話が聞けて満足」「もっと沢山聞きたかった」と複数の方が。嬉しいお言葉です。短い時間で、大切なことにポイントを絞りつつ、如何に多くの事をお伝えできるかは常に私の課題です。

 

 

お話の後はテイスティング。
今回は昼夜共に4種類のオイルを揃えました。そのうち3種はセミナーで初めて使用するオイルです。

 

 

今回使用したオイル
  1. ロンバルディア州ブレーシャ産。DOPガルダ・ブレシャーノのオイルです。品種はガルダ湖畔のカザリーヴァ、そしてレッチーノの2種のブレンドです。春の柔らかな草の香りがふわりと漂い、口に含むと少し辛みを感じます。後味はナッツのようなコク。とてもクオリティが高く美味しいオイルで、色々なお料理に非常に合わせやすいタイプです。
  2. トスカーナ州産。このオイルの具体的な産地、品種は明記されていません。トスカーナ地方の小さな農園のオイルを、日本人のブレンダーがその配合を決めているようです。何の称号も受賞歴もありませんが、非常に質が高く、とても美味しいオイルです。香りも味わいも複雑性があり、野菜、果物の香りや味わいを感じることができます。
  3. 残念なオイル。オリーブの植物の香りは全くしません。とろみが強く、口の中にいつまでも残ります。ポリフェノールは残っているのか、辛みはあります。絞りたては美味しかったはずです。
  4. ウンブリア州ペルージャ産。中部トスカーナらしい、フラントイオ種をはじめとした3種のブレンド。この中ではもっとも香りも味も強く、夏草を刈った時のような香り、口に含んだ瞬間からピリピリとした辛みがあります。料理をきりっとしめる、薬味のような使い方もできる質の高いオイルです。

1、2、4番共に、オリーブオイルが生鮮食品であると捉えている業者さんたちが扱うオイルです。ゆえに、非常にクオリティ高く、美味しい。

オリーブオイルは酸化しやすいといいますが、実は油自体は他の油と比べるとはるかに安定した性質を持っています。
ただ、バージンオリーブオイルは「生」なのです。成分を化学的に調整したり高温処理したりしている食用油は「生」ではないため、そこまで気にする必要がありません。
「生」であるバージンオリーブオイルが、美味しいままに私達消費者に届くには、業者さんたちの知識と努力があってこそなのです。

オリーブオイルテイスティングは初めてという方が、昼も夜も多かった今回、皆様オリーブオイルに辛味があることに驚いていらっしゃいました。
中には、的確に香りや味わいを表現なさる方も。
いつも思いますが、外食中心の方よりご自宅でお料理を作ってらっしゃる方のほうが、香りを表現することが最初からお上手のようです。
やはり、料理は五感を使う作業ですからね。

さて、お待ちかねのお料理の時間です。

オーナーシェフの日高氏は、食材の力を引き出す為、余計なことはせず、とにかく素材が主役をお料理を作ります。その味加減も絶妙。食材の旨みを感じられる分だけの塩加減。ゆえに、雑念なく心ゆくまで素材を味わうことが出来るのです。
邪魔と感じたり必要と感じない場合、イタリアンに欠かせないはずのオリーブオイルすら日高シェフは使用しないのです。
それがたとえ、サラダであっても!

 

先付:胡瓜のガスパチョ

胡瓜のすり流し。辛みにホースラディシュ、後はちょっとハーブも使われています。
これは、そのまま頂いても美味しいのです。
シェフはこれを、下の写真のようにオイルを全く使わず提供。「お手元でお好きなオイルをたっぷり掛けてください」と。柔らかな1番でも、ふくよかな2番でも、シャープな4番でも合うはずだからと。
皆様、銘々お好きなオイルを掛けて、都度変化する味わいを楽しみながら召し上がっていました。

LuceVerde

前菜:お米と夏野菜のサラダ

トマトのジュレをまとったサラダは、これも実はオイルが全く入らない状態で供されました。
厨房ではオイルを使用していません。ここに2番のオイルをたっぷりと掛けて召し上がって下さい。とシェフが。
先ずはそのまま頂きました。
美味しい!
して、2番のオイルを掛けて食べます。
香り、味わいに、ぐんと広がりが出ます。皆さんも驚きの声を上げてらっしゃいます。
2番のオイルは野菜、フルーツ、そして最後に柑橘系の皮のような味わいが残ります。そこに着目したシェフは、この皿にすだちを添えて。

 

プリモ(パスタ):和歌山 熊野鮎のトロフィエ

ペスト・ジェノヴエーゼ。
ショートパスタのトロフィエに、じゃがいもといんげん。これが定番ですが、なんと鮎のコンフィが乗っています。初めて見る皿です。
これがとても素晴らしい組み合わせでした。
この鮎も絶品でした。丁寧な仕事をなさる日高シェフには当然のことなのかもしれませんが、鮎にはなんの臭みもなく、身がフワッと。
パスタ、じゃがいも、チーズ・・・と少し重い素材の中で、鮎が軽やかな味わいでした。
合わせたオイルは1番。爽やかな辛みとナッツの味わいを持つガルダ・ブレシャーノのオイルが、バジルの爽やかさと川魚に良く合います。

実はこの鮎が乗ったのには理由があります。
当初使用予定だったDOPガルダ・ブレシャーノのオイルが、私の確認ミスで業者さんに欠品していることが後で分かりオイルを変更したのです。
同じDOPの美味しいオイルを見付けることはできたのですが、やはり香りも味わいも変わりました。よりシャープでクリアでした。
試作した日高シェフは、「このオイルではジェノヴェーゼには合わない。むしろトマトに合う。」と、再度料理を考え直さなければならなくなってしまったのです。

試行錯誤の末、ガルダ湖周辺のオイルであることから川魚を合わせたらどうだろうと、旬の鮎を入れたら、鮎がジェノヴェーゼとオイルの良いつなぎ役になったとのこと。
これが、素晴らしい結果でした!
合わないからとチーズやナッツを変えたり、何か野菜を追加するのではなく、メイン食材である鮎を投入するとは驚きです。これも「固定観念にとらわれたくない」と日頃おっしゃっている日高シェフならではですね。
禍転じて・・・今回の、オイルとのアッビナメント大賞はこの皿でした。

 

セコンド(肉料理):豚のポルケッタ

「ポルケッタ」はウンブリア州の郷土料理、豚の丸焼きです。今回は、ロースをばら肉で包んで焼いたポルケッタ。
合わせたオイルはもちろんウンブリアのオイル。4番です。強い辛みと香りがベストマッチでした。
これもオイルを掛けて食べたほうが断然美味しくなります。味わいが更に豊かになります。

今回もソムリエである奥様がセレクトしたワインを料理と一緒に楽しむことができました。
Monchiero Gavi del Comune Di Gavi 2012
il Carpino Selezione Chardonnay 2009
Olim Bauda Grignolino D’asti isolavilla 2011
Riva Leone Barolo 2008

LuceVerde

珍しいワインもあり、ワイン好きな方が多かったご参加の方々からもとても喜ばれていました。

ドルチェ:マスクメロンのスープ ペルノーのジェラート

暑い夏にうってつけのこのドルチェ。マスクメロンは敢えてまだ固さの残っているものを使用し、瓜の感じを出したかったとのことでした。
オイルは無しで供されました。これにも「お好きなオイルを掛けてどうぞ」と、シェフ。
例えばオイル自体に甘味がある華やかな2番だったら瓜の感じが引き立つでしょうし、シャープな4番だったらメロンの甘さが引き立つ。
これも皆様、本当に楽しそうにオイルを掛けていました。


こうして、今回はお客様自身も料理の味を決める、言ってみれば参加型のお料理を頂きました。
日高シェフの、余分な物をそぎ落とした潔いお料理の数々を、素晴らしいオイルと共に、本当に美味しく頂きました。こんな表現をすると、ストイックで堅苦しいように感じるかもしれませんが、それは違います。肩の力が抜けたお料理なのです。無理がありません。

LuceVerde

昼、夜共に満席。特に夜は更にお席を増やした為、私も入れて23名。この料理をシェフはお一人で作ったのです。通常であれば、目をつりあげてピリピリしながらかと思います。
でも、日高シェフはこの通り。
カメラを向けると「照れますから、やめて下さいよ」とこんな風に和やかにお話できるほどなのです。
この自然体が、お料理の自然さなのですね。

 


 

今回のこのセミナー開催が実現しましたのは、日高シェフの奥様のお陰です。以前、他店でのセミナーにいらして下さったのがきっかけです。とても勉強熱心で前向きな方です。
サービス担当でもいらして、当日はたったお一人でこの人数すべての料理とワインを流れるようにサーブ。
円滑にセミナーとお食事が進みましたこと、改めて感謝致します。

最後になりましたが、ご参加下さった皆様、本当にありがとうございました。
美味しく楽しい時間をご一緒出来ましたこと、光栄です。またお目に掛かる日を楽しみにしております!

 


ご協力頂いたみなさま