シチリア州トラーパニのオリーブオイル生産者「ティトーネ」社長アントネッラ来日セミナーのレポートです。
主催はティトーネ社のオリーブオイルを輸入する「株式会社アステイオン・トレーディング」
会場はティトーネ社のオイルの大ファンである畠中シェフ率いる、六本木の「イル・フィーゴ・インゴルド」
私はセミナーの基礎知識の部分の講師と、アントネッラのお話を皆さんにお伝えする通訳を担当しました。
何度も通っているトラーパニ、そしてティトーネ社ですから、写真もたくさんあります。今回もプロジェクターに写しながら皆さまに見て頂きました。
なるべくアントネッラのお話を聞きたいので、セミナーは2部制に。セミナー前半は私の担当の基礎知識編です。
どうすると質の高いオイルが出来るのか、今年のイタリアの様子はどうなのか。等を中心にお話致しました。
ここをご理解頂けると、ティトーネ社の取り組みの素晴らしさと、高いクオリティのオイルの理由が分かるからです。
今年のイタリアのオリーブオイル事情はかなり悪く、特に南部は悲惨と言ってよいほどです。
シチリアでも良くないという話を聞いておりましたので、ティトーネ社のオイルはどうか少し心配もありました。
ところが、素晴らしい出来のオイルでした。毎年ティトーネ社のオイルはテイスティングはもちろん、セミナーでも、自宅料理にも使っています。今年がここ数年で一番良いかと思います。
前菜の後に、ティトーネ社のこと、トラーパニの事を挟みます。
これは新しくした搾油機の事を説明しているところ。
アントネッラがキッチンから借りたメストロで、写真を指します。
スライドの写真をぼかしているのは、ティトーネ社で使っている実物と違うからです。
さて、素晴らしい状態の2018年搾油オイルのテイスティングです。
カップが配られている時から、爽やかな香りが漂い、歓声があがるほど。
テイスティングはアントネッラと共に。
「トマトの葉の香りがするでしょ?」
「これはアーティーチョークの香りがしませんか?」
「何かほかの意見があれば是非聞かせてね」
オイルを愛し、自社オイルの今年の出来映えに満足しているアントネッラは、幸せそうです。
色々な生産者を見ていると、搾油機を新しくした年は、だいたいトラブルが発生します。車や家電と違い、イタリアと言えども搾油機は誰にでもメンテナンス出来るものではありません。
しかも、搾油シーズンは生産者にとっては休日や祝日など関係ありませんが、メーカーはカレンダー通り。躓いてしまう様子、何度か見かけました。
ティトーネ社は、この部分もクリアしたのですね。
- 「ノチェッラーラ」2018年収穫・搾油。ノチェッラーラ デル ベリチェ種単一。この品種の特徴である青いトマト、トマトの葉と共に、青リンゴなどが感じられる非常に香り高いオイル。味わいは、まず辛味から始まり苦味も続く。辛みも苦味も軽やかで爽やか。
- 「ティトーネ ビオロジコ」2018年収穫・搾油。ノチェッラーラ デル ベリチェ、チェラスオーラ、ビアンコリッラ、コラティーナ等のブレンド。青いトマト、草をちぎった時の香り、野山の花の香りやルーコラ、グリーンアーモンドなども香る。心地良い辛味と苦味は、1番と比較すると少し強め。辛味も持続する。
- 「D.O.P. ヴァッリ トラパネージ」2018年収穫・搾油。チェラスオーラ、ノチェッラーラ デル ベリチェ主体のブレンド。草をちぎった時の香り、ローズマリーやタイムなどのハーブ、アーティーチョーク、苦みのある野菜などの香り。3つの中で最も辛味と苦味が強く、持続性もあるが、しばらくすると口中はすっきりとする。
- エキストラバージンオリーブオイルの表記はあるが、安価なオイルに良くあるカビ臭と、酸化が感じられる。
本当に素晴らしい香りと味わいのオイルでした。
テイスティングが終り食事タイムです。
乾杯用のウェルカムドリンクが運ばれ、皆さまと乾杯。
キッチンに行くと、もう前菜盛り合わせがスタンバイ。
パンも美味しそうです。
畠中シェフは人前でお話することが苦手。
会の前後の挨拶はして頂きましたが、料理の説明は各テーブルを回って下さいました。
初めましての方や旧知の方、混ぜて一緒に座って頂きましたが、皆さま和やか、そして楽しそうに会話と食事が進んでいます。
今回のメニューは以下です。
「トラーパニのオイルをトラーパニの料理で」
と、主催のアステイオン・トレーディングの笹森社長と意見も一致し、2018年の夏にトラーパニで頂いた料理を畠中シェフにリクエスト致しました。
この後は小菓子を添えたカッフェをサービス頂きました。
皆さまはテーブルで会話を続けたりオイル買ったり、思い思いに余韻を楽しんでらっしゃいました。
今回はオリーブオイルの会は初めてという方から、3年前のティトーネ来日セミナーに参加してアントネッラのファンになり、是非また会いたいと直前までスケジュール調整して下さった方も。
オリーブオイルの知識も経験も豊富な方も。私のオリーブオイル仲間も数名。アントネッラは知識が豊富ですから是非仲間たちと共有したいと思っていたので、とても嬉しいことでした。
アントネッラもテーブルを回り、皆さまとお話を。イタリア語が必要なテーブルは私も一緒に。そうでないテーブルはアントネッラ一人で。
出来るだけアントネッラと直接お話して頂きたい。
そう思って進めた会でした。
円滑な運びをアシストして下さったホールスタッフの方々、美味しいトラーパニ料理を作って下さったキッチンスタッフの方々。
ありがとうございました!
アステイオン・トレーディングの笹森社長、畠中シェフ。
ありがとうございました。
代々薬剤師の家系のティトーネ社はいち早くオリーブオイルの有機栽培を始めた事で有名です。前社長のニコラ氏が、オリーブの実の天敵であるオリーブ実バエをプロテクトする方法を考え出し、今では多くの生産者がその方法を取り入れています。
有機栽培というと、「志」の比率が高そうにみえるかもしれませんが、全く違います。現在、質の高いオリーブオイルを生産する為には、科学と技術の知識が絶対に欠かせません。
その証拠に、今日で83歳になる現社長に数年前に質問しました。
「オリーブオイルを生産するうえで、最も大切な事はなんですか?」と。
答えは「進化と革新だよ」。
てっきり、情熱だとか、自然だとか、そういう言葉が出てくるのかと思っていました。
昨年秋からティトーネ社は搾油システムを大きく変更しました。
現社長アントネッラが目指す「より香り高いオイル」の為の搾油方法です。
もちろん高品質のオイルであることが前提です。
セミナーではお伝えしきれませんでしたが、この香りを出すために品種ごとに何度も何度も搾油テストを繰り返したそうです。
品種ごとに粉砕の回転数や時間、網の大きさなどを変え、翌日または翌々日にテイスティング。その品種が出し得る最も香り高いオイルになるまで、これを数えきれないほど繰り返したそう。
「kaori、想像出来る?これは本当にヘビーな作業だったのよ」と言いうアントネッラの表情が印象的でした。
ティトーネ社の今回のオイルがこれほどまで質が高く、香り高いのは、
品種自体が香り高いからでもなく、有機栽培だからでもなく、今年の実の出来が良かったからでもなく、最新の機械を使ったからでもなく、この努力があったからこそです。
毎回毎回セミナーでお話すること。
オリーブオイルはビンや缶に入ってこそいるけれど、野菜と同じく生鮮食品。
そして、作るのは人。
この素晴らしい「作る人」に出会えたことに感謝していますし、この「作る人」と一緒にオイルを紹介する機会を頂戴できたこと、本当に光栄に思います。
心から感謝しています。
最後になりましたが、ご参加下さった皆さま。ありがとうございました!
皆さまがいらっしゃるからこそこうして会を続けていくことが出来ます。
また、美味しいオイルを囲む会に是非いらしてくださいね。
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